港南区・芹が谷に約3600坪の敷地を持つ「安部幼稚園」。創立者の故・安部富士男前園長から続く建学の精神と、子どもたちに豊かな心を育む広大な森が魅力の幼稚園です。
そんな安部幼稚園は、通常の保育とは別に、入園前の2歳児に向けた2歳児親子教室「おひさまの会」を設けています。
- 今回は、安部奈穂園長に話を聞きながら、「おひさまの会」に密着してみました。
【目次】
◎自然豊かな「森のようちえん」
◎2歳児親子教室とは
◎いっしょにあそぼう!
◎おやつ “みんなで食べるとおいしいね♪”
◎おひさまの会が大切にしたいこと…
『ゆっくり、ゆったり、知り合っていく』
◎入会説明会について
自然豊かな「森のようちえん」
横浜市港南区は芹が谷。閑静な住宅街に囲まれた場所に安部幼稚園はあります。
「森の幼稚園」
そう呼ばれることもある安部幼稚園。その理由は、やはりその敷地。山ひとつが全て幼稚園の敷地となっているのです。そして、その木漏れ日の下に子どもたちの笑い声がこだましています。
「森は『森のおじちゃん』(主に卒園生の父母)が手入れをしています。その中で子どもたちはのびのびと遊んでいます」と安部園長。
園児は先生からだけでなく、周りの人全てから様々なことを学んで大きくなるとのこと。そのため、「森のおじちゃん」の手仕事を見たり、感じたりすることも、とても良いことなのだとか。
そんな自然豊かな安部幼稚園の2歳児親子教室に潜入です。
2歳児親子教室とは
みんなで子育てを楽しめる環境を
2歳児とその保護者が参加する親子教室「おひさまの会」は、同園が2016年から始めた取り組み。安部園長は近所の「親戚のおばちゃんの家」のような場所を作りたかったと言います。
「昔は地域の結びつきが強く、周りに子育てをしている人や、子育てを助けてくれるような人が沢山いました。でも、今は、公園に行っても同世代の子どもがいない。困っていても相談できる人がいない。親子どうしの出会いの場が少ないという声が聞こえてきます」
そこで、「みんなで子育てができるような環境を」とおひさまの会を始めました。
すこしずつ、知り合っていく
「おひさまの会」は4月から10月の「おひさまの会」と11月から3月までの「後期・おひさまの会」に分かれます。
4月から10月の「おひさまの会」は、すべての2歳児親子が対象です。回数は週1回で合計20回ほど。一方、11月から3月の「後期おひさまの会」は翌年の春の入園が決定しているお子さんが対象です。開催は週1回で約10回のプログラム。どちらも午前10時開始で、11時半ごろまで。その後、晴れた日には「あべの森」で遊ぶことができます。また、途中5回程度、「お弁当の日」が設けられています。
1クラスの人数は13組前後まで。「お母さんたちが、知り合っていきやすいように」との思いから、可能な限り住んでいるエリアが近い人同士を同じクラスにしているそうです。
一緒に子育てを考えてくれる先生たち
「おひさまの会」を担当しているのは、担任の先生と、サポートの先生二人。計3人でクラスを担当します。
横浜市の親子教室で長く勤めていた経験を持つなど、子育て支援のプロフェッショナルです。子育ての悩みは尽きないと思いますが、近くにこうした場所があるということが、保護者の支えになりますね
いっしょにあそぼう!
同じ時間、ここに居るだけで…
会場は、「あべの森」のすぐ隣りに立地する「おひさまの家」と呼ばれる一軒家。…10時が近くなると、次第に、その日参加する親子が登園してきます。最初の10分から15分は自由に遊ぶ時間。親子で遊んだり、他の子と遊んだりしながら、親も子も、ゆったりと、親戚の家にでもいるような気持ちになれたら嬉しいと考えているそうです。
しばらくすると、先生の呼びかけで、担任を中心に親子が輪になりました。はじめに、名前を呼ばれたらタンバリンをたたく遊びをします。返事ができなくてもいいし、はじめのうちは恥ずかしくてお母さんの胸に顔をうずめる子もいます。それぞれが自分のままでいて、でも、そんな遊びをすることで、お母さん以外の誰かとやりとりする体験や楽しみを見つけたり、自分以外の友だちを意識したり…。同世代の親子が一緒にいるからこそ、こんな遊びや体験もできますね。
続いて、手あそびや、わらべうた遊びを親子で楽しんだ後、その日によっていろいろですが、室内・屋外を問わず、この時期の子どもにふさわしい遊びをして過ごします。
今日の遊びは…
「おひさまの家」だけでなく、時には幼稚園の園舎に遊びに行ったり、晴れた日には、おひさまの家の目の前にある「はらっぱ」や、安部幼稚園の特徴でもある「あべの森」で遊ぶこともあります。
その日によって活動は様々。室内では、ねんどや絵の具、新聞あそびやパラバルーン、クレヨンやハサミ・のりなどを使ったあそびもします。外では、色水や砂場あそびをしたり、みかんやベリーを採って食べたり、「はらっぱ」でバッタを追いかけたりもします。園庭のどうぶつ小舎で山羊やうさぎにエサをあげたり、「あべの森」の落ち葉で遊ぶこともあります。広大な敷地、体験の数は尽きません。
こうした経験を親子で楽しむことはとても大切です。先生たちとの信頼関係が出来てきたら、親子が分かれ、母子分離する活動もしていきますが、おうちの人が笑っていることが子どもたちにとっても一番幸せな時間だと考えています。そんな時間をおひさまの会では大事にしています。
おやつ “みんなで食べるとおいしいね♪”
遊びが終わった後は、おやつの時間です。おやつは添加物のないもの、噛み応えのあるもの、手作りのものなどを心がけて用意しているそう。
お母さんやお父さんに手伝ってもらいながら、自分で手を洗い、タオルで拭いてみたり、おやつが配られるのをテーブルに座って楽しみに待ってみたり…。
みんなで食べると、例えば、幼稚園の庭で採れた“すっぱい”夏みかんの味がいつもより甘くなる??…そんな魔法もかかるようです。
「ごちそうさま」のあとは、先生が持つトレイの上に、自分でお皿を運んで片付けてみたりもします。
自立への促しも大切に
2歳児が徐々に自立していくこと。それもおひさまの会の大きなテーマです。
「クツの脱ぎ履きなどもそうですが、1つずつ、自分で出来るように楽しく促していくことは、子どもにとって『大きくなる自分』を誇りのように感じることでもあります。
仲間を意識して過ごすのも、その子の育ちのために大切なこと。ゆっくり、少しずつ大きくなっていく子どもたちを応援したいと思っています」
おひさまの会が大切にしたいこと…『ゆっくり、ゆったり、知り合っていく』
親も子と同様に人と出会う
子どもたちは徐々に友だちを作っていきますが、それは親も同じです。「おひさまの会」には同世代の子を持つ親が集まっていますが、第一子の親もいれば、何人もの子育てを経験している親もいます。おひさまの会の先生だけでなく、出会った仲間と悩みを相談し合ったり、アドバイスをもらったり、お互いにやりとりすることもあるかもしれません。母も子も、人を知っていく、仲間を知っていく場所とも言えます。
「おひさまの家」は、まさしく「近所のおばちゃんの家」。
文殊の知恵が飛び交いながら、みんなで子育てをしていく環境です。
おひさまの会の先生たちから…
「とにかく、おうちの人と豊かな時間を過ごして欲しいと願って保育しています。2歳児は言葉の出始める頃ですが、生まれ月、環境等(兄弟の有無等)によって多少の差が出る頃でもあります。トイレの自立や卒乳など、いろいろ不安な所もあると思うのですが、おひさまの仲間と共に共有して、育ちあいたいと思っています。」
「また、五感を刺激するいろいろな遊びを提供しながら、思い切り笑ったり、泣いたり、怒ったり、歌ったり、踊ったりして、個性豊かに育って欲しいと思っています。」
「おうちの人が笑っている事が子ども達にとって一番幸せだと思うので、そんなことを大切に保育しています。」
自分の居場所と感じられるように
「大切なことは、安心していられる居場所があること」と安部園長。人見知りでも、マイペースでもいい。友達と出会いながら、ゆっくり親子で成長していく、はじめの一歩が詰まっているように感じました。