脳梗塞を発症し、右半身のまひが残る画家・筒井昭輔さん(93)=鷺沼在住=が1月20日(土)から31日(水)まで、介護施設プラチナコミュニティ有馬の地域交流スペースで個展を開催する。作品は利き手と反対の左手で描いた肖像画27点だ。
筒井昭輔さん
筒井さんは17歳の頃に、セザンヌの『レスタック』の絵に衝撃を受けた。しかし、すぐに絵描きとなった訳ではない。デザイン会社を起業するなど常にアートが近くにある人生を歩んできたが、自ら「絵描き」を宣言したのは、2003年に会社員を定年退職してから。その後、抽象表現主義に傾倒し、独学で作風を確立した。11年から9年連続で世界有数の展覧会「サロン・ドートンヌ」に入選するなど、数々の受賞歴がある。
半世紀前に鷺沼へ。「終活」をしていて見つけた、引っ越した当時の風景画を2022年、鷺沼町会に寄贈した。そんな平穏な余生を送っていたが、2023年1月に脳梗塞を発症。利き手の右手にまひが残った。「大好きな絵が描けなくなった」。失意のどん底にあった筒井さんを救ったのは、やはり絵だった。
施設職員の勧めで
2023年7月から介護施設を利用する中で、職員から「リハビリを兼ねて左手で利用者の肖像画を描いてみたら」と提案されたことが始まり。最初の一人は2日掛けて完成させた。これを見た中村雅奈子所長は「あまりに似ていたので驚いた」と振り返る。筒井さんの笑顔が戻ってきたため、すべての利用者を描いた作品で個展を開催することが決まった。
最後の27人目は、鉛筆と消しゴムを駆使して3時間で描き切った。筒井さんは「左手で描くなんて考えもしなかったが、練習しているうちにコツをつかんだ。目を描くのに神経を使う。はずかしくない出来栄えにはなったよ」と話す。
会場は有馬6の10の25。開催時間は午後1時から5時。
(問)同施設【電話】044・920・9355