浄光明寺は、1251年6代執権・北条長時(ながとき)により創建され、当時は、真言や浄土など四つの勧学院(教育施設)のある学問道場であったという。足利尊氏・直義(ただよし)兄弟の帰依も厚く、尊氏が朝廷への挙兵を決意した地であったとも伝わる。本尊の阿弥陀三尊像は、鎌倉独特の土紋(どもん)装飾が施され、国の重要文化財に指定されている。
ここに咲く花といえば、早春の頃は梅。客殿左など境内の其(そ)処(こ)此(こ)処(こ)で白梅が匂い始める。春が進むと、不動堂近くの2本の白木蓮(はくもくれん)が一斉に花開く。この頃には、仏殿前などの桜も咲き始め、境内は春色に染まる。
初夏には躑躅(つつじ)。客殿前などで赤やピンクの花々を咲かせる。仏殿前の階段添いの石楠花(しゃくなげ)も、薄桃色の花々を咲かせてくれる。また山門右では、泰山木(たいさんぼく)が大きな白い花々を開く。さらに客殿前の菩提樹(ぼだいじゅ)も、黄色がかった沢山の小さな花々を付ける。
盛夏の頃は百日紅(さるすべり)。真夏の太陽の下、客殿右で濃桃色の花々を付ける。夏から秋にかけては、紅白の萩が境内の其処此処で枝垂れた姿を見せてくれる。特に鐘楼前では、沢山の花々が散り零(こぼ)れる。
秋風が吹く頃には、彼岸花が境内を赤く染める。秋も深まると、客殿左の石蕗(つわぶき)や山茶花(さざんか)が、黄色や赤の花々を咲かせてくれる。そして初冬の頃、鐘楼付近の紅葉(もみじ)や銀(い)杏(ちょう)が赤や黄色に色づく。
泉ヶ谷(いずみがやつ)にそっと佇む浄光明寺。静かな谷戸(やと)で古(いにしえ)の鎌倉が体感できる、ありがたい名刹(めいさつ)である。
石塚裕之