小網代湾で昨年末から実施されてきたカキ養殖の試験に一定の成果が表れた。湾内に沈められた貝を水揚げしたところ、平均で体長6cmから10cm、重さ20gから100gほどに成長したことが確認された。5月中旬には、市民有志らでつくる「みうら小網代湾オイスター共同体」が発足。地元漁業者の新たな収入源の確保をめざし、本格始動に乗り出す。
湾内では、アイゴなどによる食害によって海藻類が減る磯焼けが起こっており、ワカメ養殖が難しくなった。ただ真珠を育てるためのアコヤガイ養殖は好調なことから、県水産技術センターの協力を得て、カキ養殖に取り組むことになった。
漁業者らは昨年12月5日、徳島産マガキの稚貝500個を籠に入れ、船から海中に沈めた。アコヤガイの世話とともに、籠の付着物を取り除いたり、中身を確認したりして管理。3月18日には、冬から春にかけて豊かな餌のプランクトンを体内に取り込んだ貝の一部を水揚げ。目標サイズに到達したことが分かった。5月8日に再度水揚げし、貝毒検査を実施すると、無毒が確認された。同センターの山田佳昭副技幹は「カキ養殖は市内では金田と上宮田に次ぐ3例目だが、小網代湾は波が穏やかでカキ養殖に適していることが証明できた」と声を弾ませた。
ただ今回はあくまで実証実験だったため、検査や資材の用意などは県が行っており、単独で事業化するには多額の費用が掛かる。そこで同共同体は現在、国に補助金を申請している段階で、必要な金額を受け取ることができれば、稚貝を1万個以上に増やし、2026年5月の出荷を目指したい考え。NPO法人小網代パール海育隊の理事長で、同共同体メンバーとしても活動する出口浩さんは「小網代の新名物にしたい」と意気込んだ。
今後は、5月28日(火)に関係者を招いた試食会を開催。6月上旬には市場で仲買に披露し、評価をもらう予定だという。