ヤバい!2021年7月17日に八王子の富士森体育館で行われたボクシングの試合「第42回 ファイティング・スピリット・シリーズ」のメインイベントで佐々木尽が2ラウンドKO勝利した。2回のダウンを奪われながらの逆転劇。
- 佐々木にとっては、所持している日本ユース・スーパーライト級の初防衛戦でもあり、この試合に勝ったことで「ユース」の入らない日本スーパーライト級の挑戦権を「ほぼ」得ることになった。
対戦相手も強い
相手は佐々木より1階級下の日本ユース・ライト級王者の湯場海樹選手。ともに、ここまで無敗で来た若手のホープで、注目された一戦だった。
正直、負けると思った
第1ラウンド
佐々木の大振りのパンチは空を切るばかり。一方で湯場選手の正確なパンチが佐々木を襲う。ロープに追い詰められる場面もあり、「試合を止められるのでは?」とも心配したが、佐々木はガードを下げて「効いてないよ」アピール。しかしそこを攻撃されるなど、相当ハラハラさせられる展開だった。試合は終始湯場がリードする形で、ついにダウンも奪われる。
第2ラウンド
2ラウンド目も佐々木は立ち上がりが悪く「ダメージ残ってそう」と思わせるボクシングが続いて、開始早々に2度目のダウン。しかしその後、湯場の攻勢をかいくぐって放たれた左フック1撃で逆転。湯場は10カウントをとられて試合は終了となった。何の予兆もなく、本当にワンパンチ(もしかしたら、まともに当てたパンチは、あの一発だけかも…)。
しかし、「どんなにボコボコにされても、どこかで逆転してくれる」。そんな期待を感じさせた。
試合後、ビックマウスで知られる佐々木も試合内容に思うところがあったのか「王座挑戦までに、絶対に勝てるレベルに持っていく」と現実味のあるコメント。
ダウンを喫したことに関しては「今までもらったことのないパンチの硬さだった」と振り返りつつ、意識が遠のくのを「気持ち良かった」と振り返った。
ほかの試合も全KO決着
佐々木のメインイベント以外にも4つの試合が行われたが、いずれも激戦。逆転劇のオンパレードで、その証拠にすべてKO決着だった。きっと、全員がこの日のために厳しいトレーニングをこなしてきたはず。あるいは、怪我や仕事、プライベートの悩みで思うように練習できなかったりと苦しんだはず。リングに上がる前の辛く長い時間があったはず。その結晶が、リングの上では花火のように一瞬で燃え上がって人々に感動を与える。
興行主の八王子中屋ボクシングジムの前会長は「ボクシングは芸術たりえる」と言っていたが、本当に芸術的な場面の連続だった。
コロナ対策
リングは試合が終わるたびに、ロープも含めて清掃が行われた。緊急事態宣言中につき、観客にも「声をあげての声援」は禁止され、「拍手で応援を」と呼び掛けられた。何度目かのアナウンスでの注意の際には、「選手らがPCR検査を受け、セコンドが抗原検査を受けて、何とか試合を開催している」ことを前提に「いずれ、コロナが終息して声を出して応援できる日を目指している。ここでクラスターを発生させるわけにはいかないのです」と呼び掛けていたのが印象的だった。コロナに翻弄され続けたボクシング界で、このタイミングで試合ができたことに関係者の苦労がしのばれる。(2021年7月17日取材)