横浜本牧絵画館が5月24日に開館5周年を迎えた。パリを拠点に戦後の写実派・静物画分野の作家として活躍した岩田榮吉(1929〜82)の作品を中心に年2回、企画展を実施してきた。
現在、開館5周年の企画展を開催しており、日本におけるトロンプルイユ(だまし絵)の先駆者である岩田の足跡を伝えている。7月18日まで。
同館は、岩田の姪にあたる武田春子さん(70)が岩田も滞在した生家の跡地=本牧元町40の7=に開いた。財団法人を設立し武田さんが理事長を、夫の由隆さん(73)が館長を務める。
岩田は慶應義塾大学工学部を経て東京藝術大学の油画科を首席で卒業、同油画専攻科修了。フランス政府の給費留学生として渡仏し晩年まで25年間滞在した。西武百貨店パリ事務所に勤務し、翻訳家としてフランス文化の紹介役を担った。
「感受性豊かな人」
日本人の作家として、いち早くフェルメールに注目し、その影響を受け、静物画やトロンプルイユを得意とした。武田さんは、岩田について「理性的で感受性豊かな人だった」と振り返る。
「日本を代表する洋画家の高橋由一や五姓田義松も滞在したことがある本牧は、日本の洋画史にとって重要な場所」と話し、今後も本牧から絵画の魅力を発信していく。
同館は、作家・研究者支援にも力を入れており、そのプロジェクトは4回を数える。作品発表の場も提供している。