一般のドライバーが自家用車で客を運ぶライドシェアについて、神奈川県タクシー協会は4月から川崎市と横浜市での運用開始を目指す方針を固め、2月6日、関係する事業者に伝えた。タクシー会社が管理する自家用車による有償運送を前提とした「日本型ライドシェア」の効果を示すことで、政界や財界の推進派が求める異業種への「全面解禁」の動きをけん制したい狙いだ。
協会の方針は「日本型」
政府は車両が不足する地域や時間帯に絞った「日本型ライドシェア」を4月から限定的に解禁する。県タクシー協会もこの動きに足並みをそろえる形で方針を固め、ガイドライン策定などの準備を始めた。
今回、協会が運用開始を決めた方式は政府と同様、道路交通法第78条の3号に基づくもので、災害などの緊急時にやむを得ない場合に限り「白ナンバー」の有償輸送を認める制度を運用する。実施に向け、協会では先行して導入を表明した東京都タクシー協会と連絡を取り合いながらガイドラインの策定を進めているが、2月7日に国土交通省の有識者会議で「制度案」が示されたため、再調整を始めたという。
国交省の「制度案」によると、利用者は配車アプリなどを使い、ライドシェアを前提として車を呼ぶ。タクシー会社には車の整備や運転手の研修、勤務時間の管理などが求められ、アルコールチェックなどを含む点呼も担う。実車に回らない「遊休車両」の活用にも触れている。県タクシー協会ではこの内容を参考にしながら、川崎と横浜の状況に即したガイドラインを作業中だ。
2023年12月にデジタル行財政改革会議が策定した中間とりまとめでは、2024年6月に向け「タクシー事業者以外の者が行うライドシェア」を可能にする法整備、いわゆる「ライドシェア新法」に言及した。県タクシー協会が今回の決定に踏み切った背景には、こうした動きが現実味を帯びる前に、「日本型ライドシェアの実効性をタクシー業界がしっかり示し、業界の持続可能性を高めたい」との狙いがある。
運用へ「課題は山積」
協会幹部は危機感をこう語る。「運用開始までに、運転手の採用と教育、出社を前提としない『遠隔点呼』も可能な体制づくりなど、やるべきことが山積している。それでも我々が主体的にタクシーの利便性を高め、結果を示さなくてはあらぬ方向に進んでしまう。緊張感とスピード感をもって進めていく」
県タクシー協会川崎支部の関進支部長(川崎タクシーグループ会長)は「国から『こういうスタイルのものだ』という明確な通達が出なくては、事業者も判断できない。いずれにせよ4月から始まる日本型ライドシェアは、便利さを追求するものではなく、安全性と公共性が担保されるものでなくてはならないと思う」と話していた。