橋本―茅ヶ崎間(全長33・3キロ)、18駅をつなぐJR相模線が来年9月、開通100周年を迎える。当初、相模川で採取した砂利を運ぶ目的で開通した同線は現在、「地域の足」として相模原など沿線地域に定着。単線から複線化をめざす、神奈川県や市などが名を連ねる団体は節目を盛りあげる企画の検討を始めていく考えだ。
開業は1921年9月28日。現在、横浜―海老名間で列車を走らせる相鉄線の運営会社の前身である「相模鉄道株式会社」が相模川の砂利を輸送する目的で開業させたのが始まり。
当初は茅ヶ崎―寒川間などだけの開通だったものの、10年後の31年に現在と同じ茅ヶ崎―橋本間が全通。44年、国に買収されると87年にJR東日本へ移管され、91年にディーゼル線から全線電化され現在の形に。横浜線など都心につながる路線へと乗り継ぐためや、生活路線としての役割を果たしてきた。
一方で、神奈川を代表するローカルな乗り物として、鉄道ファンらを魅了しているようだ。さまざまな乗り物の自動化が進むなか、ボタンを押して扉を開ける「手動式のドア」を採用し続けている点に「ロマン」を感じる人も少なくない。
そんな相模線の複線化をめざすのが県や市などの沿線自治体などで構成される団体「相模線複線化等促進期成同盟会」。名を連ねる市の担当者は「地域に愛されてきた電車。相模原の発展に寄与してくれたと考えている」と手元にある相模線の写真を見つめる。
微増続く
相模線各駅の乗降人員は伸び続けている。昨年の上溝駅の乗降人員の1日平均は1万2682人。1975年の4526人から約3倍に膨れ上がり、昨年まで6年連続して微増が続いている。「市内にある他の相模線の駅も軒並み右肩上がり。背景には沿線の発展があると考えられます」と市担当者。
市ら団体が複線化をめざす背景にはそんな利用者増に対応するため、線路を増やし列車の行き来をスムーズにすることで上下線の本数を増やしてもらいたい、という考えもあるようだ。「橋本―茅ヶ崎間の所要時間の最短は49分。ただ単線のため、列車の行き違いの待ち時間などを含めると、同じ橋本、茅ヶ崎間でも73分かかる列車もある。早期に複線化を進め利便性を高めてもらいたいと願っています」
そんな声を受ける、相模線を管轄するJR東日本横浜支社の担当者は「相模線の活発化を目指し、関係自治体と共に今後の設備の在り方を考えていきたいと思います」としている。
9月、発表
同盟会では現在、昨年公募した相模線の新しいキャッチフレーズの発表を控える。新型コロナの影響でスケジュールが遅れがちと言うが、全国から集まった2千を超える案の中から選んだものをを相模線の普及、啓発につなげたい考え。「来月上旬に発表予定。100周年を会として盛上げていければと思います」と会の事務局を務める市の担当者は意欲を示している。
地元ファンに「模型」人気 相模原市内は品切れ状態続く
相模線は地元鉄道ファンの間で人気を集めているようだ。
鉄道模型を製作しているマイクロエース(埼玉県)は2013年に相模線を初めて商品化。17年に一部リニューアルし今に至るが、同社が出荷している相模原市内のホビー用品店では各店共に「同社の相模線」は在庫切れしているようだ。「全国的に見ると人気とは言えないですが、地元神奈川では快く受け入れられているようです」と同社の担当者。
一方、市内を拠点とする鉄道模型の愛好会、相模原鉄道模型クラブの事務局長を務める高田哲哉さんは「最高時速85キロの単線のため、茅ヶ崎へ向かうのにも時間がかかりますが、そのゆったりとしたスピードも相模線の魅力と思います」と話し、相模線の模型を探し続けているものの、入手困難なプレミアム品になっていることから手に入らないままなのだという。
また高田さんは開業100周年の記念イベントとして、今年コロナの影響で中止となった、リゾート列車「伊豆クレイル」が橋本駅から伊豆急下田駅まで向かうイベントなどを実施してもらいたいと期待を寄せる。「橋本にリニア中央新幹線が開業すれば、相模線がより広く注目を集めるようになると思います。楽しみですね」