写経や仏像彫刻、運慶作の仏像参拝などをバーチャルで体験できる取り組みが芦名の浄楽寺で7月から始まる。三浦半島の寺院や地域資源の活用をめざす地元企業ともタッグを組み(一社)BUSHIDO文化協会を発足させ、広域での観光業の盛り上げや寺院と地域との新たな関わり方などを模索していく。
周辺寺院や事業者とも連携
同協会では、文化庁の補助事業として昨年度に採択を受け、準備を進めてきた。歴史的価値の高い寺院や国指定重要文化財の仏像などを数多く有する三浦半島で、それらをより広くわかりやすく魅力を伝えるために3つの事業を柱とした。
マンガによる仏像解説をAR・多言語で
まず浄楽寺に加え、協会に加盟する岩戸の満願寺、大矢部の満昌寺と清雲寺の各境内で、マンガによる仏像解説などを閲覧できる立て看板を設置した。看板に掲載されている二次元バーコードをスマートフォンで読み込むことで、AR(拡張現実)仕立てのマンガ解説を無料で読むことができる(実物の文化財拝観は要予約で有料)。これを日本語だけでなく英語、中国語、フランス語の4カ国語にも対応させることで、日本文化や仏教と関わりの深い武士道精神に興味を抱く国内外の旅行者を三浦半島へ呼び込み、地域インバウンドにつなげる考えだ。
写経や仏像作成体験をタブレットで
次に「生きた歴史体験プログラム」としてタブレット端末も取り入れた写経と小型仏像作成体験ができるプログラムを開設。阿弥陀経や自身の願いに応じた梵字を筆で書き下ろした画像をタブレット端末に画像として取り込み、奉納するプログラム。
秋谷在住の仏師・梶谷叡正さんが直接指導を行う彫像、彩色修行体験も用意した。いずれも7月1日(木)開始で有料(拝観料含む)、現在予約を受付けている。
国指定重要文化財の仏像5体を3DVRで
また鎌倉時代に活躍した仏師・運慶作の国指定重要文化財の仏像5体を3DVR(仮想現実)を通して理解を深めるプログラムも構築。タブレット端末とVRゴーグルを用い、願い事を仏像に向かって捧げる、幻想的な体験ができる仕掛けになっている。
地域活性と寺院の存在意義を考える
同協会代表理事で、浄楽寺副住職の土川憲弥さんは地域観光だけでなく、寺院の存在意義にも一石を投じたい考えだという。「寺院は地域の人々のコミュニティの場として幅広く機能してきたが、今では訪れる人も限定的。活動の輪を広げることで寺院に注目が集まり、人と人を繋ぐハブの役割を担える存在になっていけば」と話した。