身近な環境でスポーツに親しむ機会を提供する「総合型地域スポーツクラブ」をご存じでしょうか。
スポーツ庁が推奨する地域が主体となって運営する新しいタイプのスポーツクラブで、全国で約3500の団体が活動しています。参加は年齢を問わず、競技種目も多種多様。スポーツを通じて、市民の健康増進やコミュニティ形成をめざす拠点としての役割を持っています。
昨今では、中学校の部活動を民間団体などに委ねる「地域移行」の議論が活発化しており、同クラブがその受け皿になっていくことも期待されているようです。
10年超の活動実績「よこすか総合型地域スポーツクラブ」
横須賀では、廃校となった上の台中学校(鴨居)を利用して2012年にNPO法人「よこすか総合型地域スポーツクラブ 上の台教室」が立ち上がり、すでに10年超の実績があります。
2021年には桜小を拠点とする「桜小教室」(坂本町)も活動をスタート。クラブは、横須賀市体育協会の下部組織に位置づけられており、協会が各種目の講師を派遣して専門家が指導を行っています。2022年度は以下の種目が用意されています。
【上の台教室】サッカー、バドミントン、体操、剣道、陸上、なぎなた、卓球、グランドゴルフ、バスケットボール、ソフトテニス、太極拳
【桜小教室】バスケットボール、なぎなた、サッカー、太極拳、陸上、空手エクササイズ
このほかにも同体育協会に加盟する40の競技団体がクラブの賛助会員になっており、地域のニーズなどによって、新しい種目が追加されていくこともあるようです。
技術向上や競うことは二の次、三の次。とにかくスポーツを楽しむ
「上の台教室」を訪れて、実際の活動を見学しました。競技種目ごとに週間予定が組まれており、この日は、グラウンドで陸上、体育館ではなぎなたと卓球の教室が行われていました。
陸上教室
陸上教室に参加しているのは地域の小学生。陸上競技というよりも〝かけっこ〟のイメージ。障害物を飛び越えながら走ったり、バトンリレーを楽しんだり。あらゆるスポーツの基本となる走力を、楽しさの中から身に着けていく指導が行われていました。異なる学校の児童が集まっているため、新しい友達づくりの場にもなっているようです。
なぎなた教室
体育館で行われているなぎなた教室では、はかま姿の大人たちに混じって小・中学生の姿も。小学生の頃から続けているという女子生徒は、部活動にこの種目がないため、週に一度のペースで通っているそう。学校では文化系の部に所属しており、スケジュールをやりくりしながら級の昇格をめざして、稽古に励んでいるとのことでした。このほかに、子どもの活動に触発されて母親も会員となり、親子で一緒に汗を流す姿もありました。
卓球教室
元気なシニアがラケットを振る卓球教室では、孫ほど年の離れた小学生とラリーの応酬が繰り広げられていました。参加者は70代以上の年配者と児童。異世代でダブルスを組むなどして交流を深めています。
卓球台の設置や片付けも手分けしながら取り組んでいる姿が印象的。小学生時代にこの教室に通って、腕を磨いた中学生が部活動の大会で好成績を残すなどの成果も生まれているようです。
さいごに
「世代をまたいでスポーツを通じた交流機会を提供することが一番の目的」と同クラブで副理事長を務める石渡一義さん。技術向上や競うことを主目的にしておらず、とにかくスポーツを楽しむことを重要視。生涯スポーツの実践の場として機能させていく考えです。今後は西部地区、北部地区にも同様の環境を整備していくことを目指しているとのことでした。
■NPO法人 よこすか地域総合スポーツクラブ
【上の台教室】横須賀市鴨居2-55-15(グーグルマップはこちら)
【桜小教室】横須賀市坂本町 1-19(グーグルマップはこちら)