横須賀に「運慶作」が勢ぞろい 横須賀美術館で開催中の特別展をレポート

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横須賀に「運慶作」が勢ぞろい  横須賀美術館で開催中の特別展をレポート

日本で一番有名な「仏師」と言われて、すぐに上がる名前と言えば、運慶ではないでしょうか?12世紀末から13世紀はじめにかけて活躍し、鎌倉時代に於ける関東での「仏教彫刻」の展開を考えるうえでも欠かせない存在。

  • 横須賀市鴨居にある横須賀美術館では、特別展「運慶 鎌倉幕府と三浦一族」を開催中です。市内の寺院にある運慶作、運慶工房作などを一堂に集めた展示の様子をレポートします。

鎌倉幕府と運慶のつながり

そのまえに、少し歴史についておさらい。

1223年没と言われる運慶の800年遠忌(おんき)という特別な節目にあたることから企画された展示ですが、「鎌倉」という言葉にピンときた方、少なくないかもしれません。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の放送に伴い、この時代の歴史はもちろん、「武家文化」も注目されています。源頼朝や北条時政をはじめ、当時の「御家人」たちは多くの寺院を建立し、仏像を制作しており、神奈川県内には寺社仏閣の「ゆかりの地」も多数あります。

神奈川県観光協会の「鎌倉殿の13人」特設サイト

https://www.kanagawa-kankou.or.jp/?p=we-page-entry&spot=395268

奈良仏師として、興福寺の再興などに携わっていた運慶がなぜ東国(鎌倉幕府)と密接に結びつくようになったのか―。東国武士が平氏や朝廷の仏師集団を避けたことや興福寺の僧と北条氏が親戚関係にあったことなどが指摘されています。*同展公式図録より

横須賀市・芦名の浄楽寺にある運慶の真作5駆は、鎌倉時代の有力御家人だった和田義盛とその妻の発願によって手掛けられたといわれています。

  • 運慶作の特徴

運慶が活躍する前の時代の仏像は、柔和な表情で彫りが浅いという特徴がありました。一方で、力強い表情や体躯、動きを感じる佇まいが「運慶作」の持ち味。印象的なのは眼の表現。睨みつけるような眼の表情は、「玉眼」という技術を使ったもので、像の眼の部分をくり抜いて水晶を嵌めています。

現在、「運慶作」と言われる像は国内に約30駆あると言われています。「真作」とする根拠はいくつかあるそうで、作風や文献、像内納入品(像をくり抜いて納入された銘札など)から判断されるとか。運慶が弟子たちと手掛けた「運慶工房」の作もあります。

いざ、運慶展へ

前置きが長くなってしまいましたが、特別展示の見どころをご紹介。

まず入口で迎え入れてくれるのは「鎌倉殿の13人」の等身大パネル。2階の情報スペースにはドラマシーンと解説のパネルもありました(期間限定展示で8月10日(水)13時〜8月16日(火)のみ )。

展示室1では「運慶以前」の東国の様子を紹介。三浦一族の仏教文化を学べる内容で「三浦義明坐像」や衣笠城経塚の出土資料を展示しています。

大善寺(衣笠町)所蔵の天王立像

続く展示室2には浄楽寺(横須賀市芦名)所蔵蔵の毘沙門天立像と不動明王立像など、運慶の真髄に触れられます。

その隣室へ足を進めると満願寺(横須賀市岩戸)所蔵の観音菩薩立像と地蔵菩薩立像が。近年の調べで、満願寺は三浦義明供養のために源頼朝が発願した阿弥陀堂を前身とした可能性が高く、ここで所蔵する仏像は運慶一門が手掛けたものと推測されています。

浄楽寺(芦名)所蔵の毘沙門天立像(左)と不動明王立像

運慶作とされる理由のひとつが、納入されていたこの「月輪形銘札」にある「運慶小仏師十人」との銘文

ここで気付いたことがひとつ。通常の展示では概ね壁面は白色なのですが、この室内は深みのある灰色。照明の影とも相まって、仏像のずっしりとした存在感をさらに引き立てているように感じます。

国・県・市の「重文」ずらり

特別展では国指定の重要文化財は4件16駆、県指定重文は1件、市指定の有形重文の仏像5件、仏画1件を展示しています。

仏像だけでなく、北条時政書状や満昌寺(横須賀市大矢部)のある三浦郡大矢部村略絵図など、歴史資料もずらり。「運慶を特集する展示は、これまで国立博物館と神奈川県立金沢文庫のみで、横須賀市内の寺院が所蔵する貴重な文化財が一堂に会するのは珍しい」と展示に携わっている金沢文庫の主任学芸員、瀬谷貴之さんは話します。「仏像さまたちも海を見たいかなと思って(笑)。横須賀・三浦半島に鎌倉幕府を支えた一族がいたこと、それにまつわる仏像などの文化が広がっていたことを知ってもらえれば」と満願寺の永井宗直住職。

横須賀市内の大規模な文化財展示、さらには美術館でのこのような仏像展はあまり例がないそう。

曹源寺(公郷町)所蔵の十二神将像は、1体ごとに異なった造形で今にも動き出しそうな躍動感溢れる立ち姿です。 *1998年から外部に寄託されているため、24年ぶりの横須賀への「里帰り」だそう

関連イベントも楽しそう!

 横須賀美術館では特別展に関連したイベントを多数用意しています。仏教や仏像について、分かりやすく解説。市内の寺院関係者が講師として登場する企画もあります。中学生向けの講座は、夏休みの課題にもピッタリ。

住職によるお寺と仏様のトーク(7月18日(祝))
「運慶 鎌倉幕府と三浦一族展」連続講座(7月24日(日)、7月30日(土)、8月20日(土)、8月27日(土))
中学生のための美術鑑賞教室 特別講座「運慶入門」(7月28日(木))
中学生のための美術鑑賞教室 2022(7月26日 (火)、8月2日(火)、8月4日(木)、8月16日(火)、8月18日(木))
美術館座禅会(7月31日(日)、8月11日(祝))
集まれ仏像好き!ここだけの仏様対談(8月7日(日))

*時間等は横須賀美術館(046-845-1211)にお問い合わせください

この眼光の迫力!横須賀美術館と県立金沢文庫による公式図録も必見です。

コラボメニューも楽しめる!

また、隣接するイタリアンレストラン「横須賀アクアマーレ」では特別展をイメージしたコラボメニューを用意。鎌倉時代に中国から伝わったとされる精進料理をイメージした、ランチ限定の「けんちん汁風ミネストローネ」には当時の調味料「醤(ひしお)」を添えて提供しているそう。デザートの「ごま豆乳パンナコッタ」もこの期間限定の特別メニュー。

濃い〝歴史好き″でなくても、大河ドラマをきっかけに仏像やゆかりの地に興味を持った人いるのでは? 横須賀美術館のロケーションと合わせて、夏の美術鑑賞、楽しんでみてはいかがでしょうか。

*神奈川県立金沢文庫(横浜市金沢区)でも10月7日(金)〜11月27日(日)に巡回展あり

開催日

2022年7月6日(水)~2022年9月11日(日)
休館日8月1日(月)

住所

神奈川県横須賀市鴨居4-1

横須賀美術館

費用

観覧料は一般1000円/高大・65歳以上800円/中学生以下無料

問い合わせ

横須賀美術館

電話

046-845-1211

046-845-1211

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公開日:2022-07-13

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