『893(ヤクザ)』
鷺沼在住の日吉拓哉さん(多摩美術大学4年)が装画と挿絵を描いた本が、11日に発売された。出版社からも高評で、ハリウッド映画化も進行中だ。日吉さんは「作品が形となり売られるのはうれしい。手にとってくれたら」と話している。
日吉さんが描いた本は、『893(ヤクザ)』(発行=ワニ・プラス)。アメリカの田舎出身のオタク青年が、日本の「YAKUZA」に憧れ来日し、のし上がっていく、ハードボイルドアクションとコメディが融合したエンタメ作品だ。
大学で親交のある非常勤講師の守先正さんに、6月末に声をかけられたことがきっかけ。就職活動に励む中のため「不安もあったが任されたうれしさもあった」と、1カ月に満たない締め切りに向け、ラフを作りをスタート。当初は「和彫でムキムキのイカつい感じ」に仕上げたが、守先さんに「これでは女性は手にとってくれない」と却下されるなど試行錯誤。作品を何度も読み返し、「キャッチーに」と何枚も描き直した。
完成した表紙の絵は、ネオン街を背景に金髪の外国人が「ドス」とスマートフォンを持ち、主人公の郷里をイメージしたトウモロコシ畑に、花札の赤短と盃が描かれている。
編集者とのやり取りは守先さんが窓口に。色味を確認する「色校」などの専門用語などに戸惑いながらも、8月に完成した。「見られてこその作品」と喜びを語る。
「若さ」評価
守先さんは、表紙のデザインにあたり「内容に沿った絵が描け、タッチが合っている」と教え子の中から日吉さんを選出。「今とても売れっ子」という、ナイキ社の絵を手掛けた一乗ひかるさんや、和テイストのリアルなタッチが人気の矢野恵司さんらプロのイラストレーターも候補者に名を連ねた。編集側の「若い人に手にとってほしい」という思いから「若い感覚と若い人の支持がある」日吉さんが選ばれた。完成した作品は、「内容にあった良いデザイン」と出版社内でも高評価だという。
葉加瀬太郎さんのアルバムジャケット制作も
日吉さんは2021年、ツイッターに投稿した絵がバイオリニスト葉加瀬太郎さんの目に留まり、アルバムジャケットを制作。これをきっかけにテレビ出演した。「就職活動に有利かと思ったが、まだ活動中」と苦笑い。「この経験も生かしてデザイン関係の仕事に就けるよう就職活動を頑張りつつ、良い作品を作りたい」と希望を語った。同書は全国書店などで販売中(税別1400円)。