この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです
前回は歯の根にできる歯根嚢胞についてお話しました。今回は唇や舌などの粘膜にできる「粘液嚢胞」についてです。
「粘液嚢胞」は、水膨れのような出来物で特に下唇に好発します。口の中には1~5㎜ほどの唾液を分泌する小唾液腺が無数に存在します。唇や舌、頬を誤って咬んでしまったり、モノが刺さったりすることで、その小唾液腺が潰れたり破れたりして発症します。
口腔外科領域における軟組織の嚢胞の大部分が粘液嚢胞です。年齢的には10歳未満から30歳代までにほぼ均等して多く、50歳以後の発症は少ないといわれています。また口の底や顎の下に、がまガエルのように膨れてくるガマ腫といわれる粘液嚢胞もあり、様々な場所にできるのが特徴です。
粘液嚢胞は痛みなどがないため放置されることが多く、時には自然に潰れ消失することもありますが、ほとんどが必ず再発します。
治療の基本は原因となっている小唾液腺と一緒に切除をすることなので、放置せず小さいうちに受診しましょう。「口内炎が治らない」「水ぶくれが何度もできる」「口にしこりがある」などといった気になる症状がある際は粘液嚢胞を疑い、口腔外科に相談しましょう。ちなみに、私の8歳の娘にも先日粘液嚢胞ができてしまい、「切らなきゃね〜」と言うと嫌がっていました。しかし、難しい手術ではないので、心配事は早めに相談してくださいね