地域に根差した塗装店へ
川崎市中原区小杉町で塗装業を営んで70年以上の老舗「山佐塗装店」。2015年(平成27年)に二代目である父が引退し、渡辺保さんが三代目となる親方に就任した。
渡辺さんは初代の祖父、父から受け継いだ「塗装工事を通して地元のお客様に幸せをお届けする」を使命に、日々仕事に取り組んでいる。その言葉通り、地元の方から頼られることが多いという。「どこに頼んだらいいかわからないからまず山佐さんに連絡してみた、という方もいて、真っ先にうちを思い浮かべてくれたと思うと、頼りにされているんだなと実感します」。
塗装以外の困りごとにも
山佐塗装店は塗装はもちろん、それ以外の家の困りごとの相談にも乗っている。例えば雨漏れ、水漏れ、シロアリ駆除など。「塗装につながらなくても、家に関わることでお困りのことがあれば相談に乗ります」と渡辺さんは話す。
「正直に、正しく仕事をしたい」
仕事の流れは「屋根や外壁を塗装したい」、という連絡を受けて渡辺さんが足を運び、見積もりをして提案する。この際、工事を行わなくてもよい場合には必要かどうかをはっきり伝えることにしている。
その理由はリフォームの悪徳業者がいるからだという。「通りがかりを装って『屋根が壊れているかもしれないのでよろしければ見ましょうか』と親切を装って行う修理詐欺や、『ひびが入っていますよ』と言って不安な気持ちを煽る業者がいる。
だからこそ自分の会社は本当にリフォームが必要なのかどうかをしっかりと見極め提案した上で、最終的な判断はお客様自身で決めてもらっている」と話し、依頼者がリフォームを必要としているかを第一にしている。「高いか安いかどうかはお客様自身で決めること。その判断材料として、自分は工事をした時のメリットからデメリット、リスクまでも伝えて正直に仕事をしている」
リフォームは不透明
リフォームを行うには金銭面はもちろん、時間も大幅にかかる。また結果がすぐに出ないことや比較できないことも難しさを感じている部分。完成までに時間がかかるため不透明な部分も多いが、契約時にお金を払わせる会社も多々あるという。
依頼者側からすると不安な面も多い家のリフォーム工事。だからこそ山佐塗装店では職人として塗料の選定から塗り方にもこだわって作業する。「適材適所でその家に合う下地や塗料、塗り方を常に考え、なるべく長持ちするように気を付けています」。
細かい部分まで丁寧に
最善を尽くす中で最もこだわっているのは仕上がりや出来栄え。
一見すると分からないところまで丁寧に作業をしている。その出来栄えは仕事関係者から褒められるほどだという。「職人にできるだけちゃんと作業してもらえるように、急かすことは言わないように心掛けています。その分時間はかかってしまうが、丁寧に作業をするように心がけています」
この仕事は人生そのもの
時間と手間をかけて丁寧に作業を行う山佐塗装店。その一番の理由は「この仕事は人生そのもの。ライフワークだから」と熱を込めた。家業を継いだときに、辞めたり転職することは考えられなかった。
また、会社を発展させるよりも、継続を優先し、自分でできることは自分で行い、人任せにはしない。現場も自分で把握できる範囲でやっている。
丁寧な仕事の成果とは
丁寧に手間暇をかけて仕事を行う山佐塗装店。その結果、全国で100社以上が加盟している「日本建築塗装職人の会」から表彰を受けている。
1つ目は塗装業界の進歩発展を願い、優れた住宅塗装デザインを表彰する「住宅塗装ベストデザイン賞」を4年連続の受賞。2つ目は長年地域に密着した経営を行っている塗装店を表彰する「地域密着度No.1賞」を3年連続で受賞している。
仕事以外の地域のつながり
渡辺さんは山佐塗装店として地域に密着したサービスを丁寧に行っている一方、仕事以外でも地域の活動に積極的に参加している。2007年(平成19年)から9年間は地元である川崎市中原区の消防団に参加。消防団操法大会に出場した経験もある。
このほか市のボランティアへの登録や、10年以上前には「応急手当普及員」の資格を取得し、AEDの使い方の指導などを行っている。いつ何があっても対応できるように、鞄には常に人工呼吸用のマウスピースと「応急手当」の認定証を持ち歩いているという。また、月に1回以上は必ずボランティアにも参加し、地域や人とのつながりを大切にしている。
お客様第一に
「塗装工事は必ずやらなければいけない、というものではない。だからこそその人の希望に合った提案を行い、必要でない場合にははっきりと伝えることが大切」。お客様に寄り添い、困っている人の相談にも乗る塗装店として、日々の努力を怠らず、これからも技を磨いていく。