聴覚障がい者やその家族を支える神奈川県聴覚障害者福祉センター。当記事では同センターの代表的な取り組みに数えられる、聞こえない、または聞こえにくい子とその家族が交流する「家族教室」と、声をその場で文字に変えて聴覚障がい者に伝える要約筆記者を育てる「要約筆記者養成講習会」を紹介します。

「家族教室」

不安から楽しさへ　健やかな成長を支える「家族教室」（対象・聴覚障がい児0歳～就学前の乳幼児とそのご家族）

　聞こえない、聞こえにくいお子さんを持つ保護者は、日々の子育ての悩みや将来への不安など「モヤモヤ」。そんなご家族の気持ちを楽にしてくれるのがこの家族教室です。教室といっても講義を聞くようなものではありません。専門の相談員とともに参加した家族同士が交流し、悩みを共有したり、情報交換したり、文字通り遊んだりする内容です。

車座になって思いを共有する参加者ら

　テーマも「みんなで遊ぼう！みんなで話そう！」だったり、「おしゃべり広場」で自由にワイワイ交流したりと肩肘張らずお子さんと一緒に楽しみながら交流できるものばかり。先輩ママのためになる体験談なども聞ける場となっています。

参加者同士子どもたちの交流も魅力

　県内各地で定期的に行われており、2022年から2025年2月までの3年間余りでおよそ160組の家族が交流。多い時には７，８家族が集まる人気企画でもあります。

　2月15日には厚木市で開催。先輩ママさんらからは「手話で生活が助かった経験」や「ろう学校の生活」、「進学や就職について」の実体験に基づくお話が披露されました。その中、耳の聞こえない子どもとのコミュニケーションのコツとして、「表情を大げさなくらいつくってあげると気持ちが伝わる」といったお話が聞けました。

参加した鈴木さんご一家

　相模原市から参加した生後6カ月のお子さんが難聴という鈴木さんは家族4人で参加。ご主人の諒明さんは「子どもがまだ小さいので将来のことを色々聞くことができて良かった。ろう学校に通わせようと思っているので、メリットなども聞けて良かった」とコメントしてくれました。

　また会場には支援グッズや制度資料などがずらりと並ぶほか、専門員と個別相談もできます。

様々な支援グッズや制度紹介のコーナーも

　同センターで家族教室を担当するスタッフは「聞こえない、聞こえにくお子さんとご両親だけでなく、ごきょうだい、祖父、祖母、みんなで楽しめる場です。たくさんの出会いが待っていますので、ぜひご参加を！」と呼び掛けています。

「要約筆記者養成講習会」

聴覚障がい者の強い味方「要約筆記者」。初心者大歓迎の無料養成講習会受付中

　要約筆記とは、話した内容を文字にしてコミュニケーションのサポートをすることを言います。活躍する場面は幅広く、会議や講演会からひいては病院の診察時や冠婚葬祭や身近な人の手助けをするために利用されています。手書きとパソコンの2種類があります。

　要約筆記者は海外の映画の字幕のような感じで、時間差少なく文字化して聴覚障がい者を支援する役割を担い、企業や学校、イベント、選挙の時などで活躍しています。

　また、話したままをそのまま文字にしていては追いつきません。話された内容を文字通り短く要約して伝えてくれます。要約筆記者は話したことを理解し、要約し、文字にしていくということを素早く正確に実行するプロフェッショナルです。聴覚障がい者がほかの人と分け隔てなく様々なことに参加したり、意見を述べたり、安心して暮らしたりすることができる権利を護る重要な仕事と言えます。

　現在、要約筆記者として活躍している方は「いてくれて助かった、と言われて嬉しかった」と社会貢献することのやりがいを教えてくれました。

　同センターでは年に１回、センターを会場にこの「要約筆記者」の無料養成講習会を実施。2025年も初心者を対象に4月1日（火）まで申し込みを受け付けているほか、3月26日（水）には事前説明会を実施する予定です。

　「要約筆記ってどんなことをするの？そんなちょっとした興味だけでもまったく問題ありません。気軽にご参加を」と同センターのスタッフ。「最初から要約筆記者を目指さなくても入門講習や体験教室を市町村で実施していることもありますので、そちらもぜひご参加を」と訴えます。

　「普通に見えても聞こえにくいという人がいる、筆談が必要な時があると理解していただくだけでも大変、嬉しい」と話した。

　要約筆記者養成講習会は県内の政令市（横浜市・川崎市・相模原市）および中核市（横須賀市）を除く在住者で18歳以上ならだれでも参加可能。詳細は神奈川県聴覚障害者福祉センターホームページ「講座・講習会・研修会のお知らせ」から。