我が家の黒柴犬をかわいがるあまり、着々と愛犬家に育ってきた娘2歳。そんな動物好きの娘を連れて行きたい一心でやってきました!東京都町田市にある「町田リス園」。今回は仕事にかこつけて“下見”レポートと参りましょう。
風格ある入口。2018年12月で開園30周年を迎える施設です。この日は平日にも関わらず、10時の開園から続々と親子連れやカップル、外国人観光客などが来園していました。
町田リス園全体はこじんまりした小動物園です。ざっくり言うとマップ右側にある「リス放し飼い広場」と、左側にウサギやモルモットなどその他の小動物がいるふれあい広場ゾーン。そして売店が出口へとつながっています。
まずはスタッフの声を聞いてみようということで、NPO法人町田リス園園長の樋口健治さんに案内してもらいました。ここは、小動物園であると同時に障がい者自立支援法の就労支援B型施設でもあり、知的障がいのある利用者20人が働いてます。飼育員や売店スタッフらと一緒に、利用者はチケットもぎりや放し飼い広場出入り口のドア係、リス餌の袋詰め、清掃作業などを行っています。
タイワンリス200匹がぴょんぴょんやって来る
なんといっても特徴的なのが「リス放し飼い広場」。リスにはサルのようなテリトリーの概念がなく、ボスもいないそう。そのためか、餌のひまわりの種を持っている来園者の手元を目がけてぴょんぴょんと自由奔放に飛び回っているのです。餌は一袋100円で、放し飼い広場の入口手前や中でも販売しています。
樋口園長によると、広場には200匹のタイワンリス(クリハラリス)が暮らしています。このタイワンリス、「外来生物法」に基づく「特定外来生物」に指定されていることから、園では1匹1匹にマイクロチップを埋め込みして管理し、亡くなった場合は随時届け出を行っているそうです。
放し飼い広場には銀色の柵(スタッフによる通称:ねずみ返し)が広場を囲むように設置されていて、リスがどこかに逃げ出すということはないそう。また、写真ではわかりづらいですが、天敵の鷹などの鳥が入ってこないように、広場上空を覆う網が張られています。
リス放し飼い広場の中にはタイワンリスのみですが、ふれあい広場付近にはアカリス、シマリス、ニホンリスのコーナーがあるほか、オウムやウサギ、モルモットなど、様々な動物が飼育されています。
看板効果や外国人客によるSNS効果はいかに?
実はここ数年、リスと間近に触れ合える「癒しの動物園」としてインスタグラムを中心に外国人観光客の間で注目されたり、今年の春頃には「看板がすごい」とツイッター上で拡散されTV番組で取り上げられたりと、何かと話題を呼んでいた町田リス園。その影響で来場者は増えたのか、園長に尋ねてみると、そこまで爆発的な増加が見られたというわけでもないそう。子どもを連れて行きたい身としては、それを聞いて一安心。それでも、土日祝日には1日1000人から2000人の来場があるそうです。
ちなみに、この看板の裏はこんな感じ。
小さな子連れパパママへ耳より情報
園内にはいくつか休憩スポットがあります。食事を提供するレストランなどはありませんが、売店にパンやアイスクリームなどが販売されているほか、座って休憩できるコーナーがあります。
ふれあい広場と売店の間には自動販売機やベンチ、テーブルがあり休憩できます。
トイレにはオムツ替えベッドがあり、子ども用のイスが設置された個室も。また授乳室はありませんが、スタッフに声をかければ、管理棟にある部屋を開放してくれます。
放し飼い広場の中は、ベビーカーで入ることも可能ですが、餌やミトンを持ち歩いていると、タイワンリスが飛び乗ってくることもあるので、動物に慣れていない子どもや、歩けない子どもがいる場合は抱っこ紐で入った方がいいかもしれません。抱っこしている子ども用にかけるタオルも、申し出れば貸出しているとのこと。
「ジュンコさん」お手製の寝床?
町田リス園、もう一人のアイドル?といっても過言ではないのが、ケヅメリクガメの「ジュンコ」です。スタッフの中には愛着を込めて「ジュンコさん」と呼ぶ方も。北アフリカ・エチオピア産で、体重は80キロほど。主に放し飼い広場の中にいて、広場の通路を闊歩していたりもします。
普段はキュウリや冬瓜などを食べて暮らしています。取材に訪れた日はスペシャルで、スーパーで余剰したメロンを皮ごとがぶがぶ。リスたちもおこぼれをもらっていました。
話がそれましたが、この放し飼い広場にジュンコお手製の寝床があると、スタッフの方に教えていただきました。それがこちら。
わかりづらいですが、この穴、ジュンコが3年ほど前からせっせと掘って作った巣穴だそうです。いま一度、ジュンコの前足をよ~く観察してみると、ギザギザの溝に土がついているではありませんか!穴はジュンコがすっぽり収まるくらいに掘られていて、たまに穴から広場を覗いていることもあるとか。飼育員さんによると、穴は夏に涼しく、冬はナマぬるいそう。放し飼い広場のどこかにあるジュンコの寝床、ぜひ探してみて下さい。
「アトリエ一番坂」のアートを楽しむ
小さな動物とのふれあいを満喫できる町田リス園で、もう一つのお楽しみがアートです。入口で出迎えてくれる顔はめ看板をはじめ、トイレの壁面、リス放し飼い広場入口の壁面や広場内の地面まで、あらゆる建造物に絵が描かれているのです。
ある壁面に「Emi Hayashi アトリエ一番坂」との署名を見つけ、樋口園長に尋ねてみました。「アトリエ一番坂」は、川崎市麻生区の新百合ヶ丘や町田市、横浜市青葉区の青葉台などにある絵画教室で、署名の林絵美さんは、アトリエ一番坂所属の油絵作家でした。
アトリエ一番坂主宰の舘岡豊照さんによると、町田リス園とのつながりは2005年頃。施設の老朽化が目立ってきたことから、町田市(現:地域福祉部障がい福祉課)から絵を描いてほしいという依頼を受けて、プロジェクトが始まったといいます。当時の絵画教室の生徒や働く利用者など総勢30名ほどで、20日間くらいかけて園の外側を飾る壁画が完成されました。完成後にはコンサートを行ったり、以降も園内で油絵展を行ったりと、絵を通じてさまざまな賑わいや交流が生まれたといいます。
林さんが園内のアートを手掛けたのは、2014年から。3年ほどかけてトイレの外壁からはじまり、壁画や看板など着々と園内を彩っていきました。
当時の思いを林さんに伺うと「リス園は子どもが沢山いらっしゃるので、子どもの目線からみて、絵と絵がつながるように工夫しました。地面にも絵をかいて足元を明るくしました」と語ってくれました。現在はリス園で働く利用者に月1回、絵を教えているそうです。
巣箱づくりイベントも
リス放し飼い広場にたくさん設置されている色とりどりの巣箱。雨風にさらされたりして傷んでくることから、町田リス園では2カ月に1回、奇数月の最終土曜に巣箱作りをおこなっているそうです。入園料のみで参加でき、申込先着順。電話で予約を受け付けています。自分で色を塗った巣箱が広場に飾られたら、何度も通ってしまいそうですね。