横浜市南区永田みなみ台の自然豊かな丘陵地帯に高くそびえる「南永田団地」は、みなとみらい地区や富士山を一望できるなどの眺望が抜群です。
「地域ににぎわいをもたらそう」という熱い思いを持つ住民が多いのも南永田団地の魅力。団地の課題解決に取り組み、さまざまな角度からまちの活性化を促進する住民の皆さんを取材しました。(2022年2月21日起稿)
【目次】
◎上質な住環境
◎多世代交流の拠点
子どもに活躍の場を
つながり祭コレクション
国際色豊か
◎”ほっと一息”できるサロン
◎環境保全に一役
◎永田みなみ台ほっとサライの歩み
上質な住環境
南永田団地は京急線・弘明寺駅付近のバス停(弘明寺口)から8分ほどの場所に立地し、約50年の歴史を有する緑豊かな大規模団地です。団地2街区にある商店街にスーパーマーケットや郵便局、団地を管理するUR都市機構の生活支援アドバイザーが常駐する管理事務所があります。
また、敷地内に保育園と学童クラブが立地。横浜市立永田台小学校、横浜市立永田中学校が隣接するなど、子育て世代にやさしい環境が整っています。団地1街区には住民が中心となって運営するプールがあり、永田中学校の生徒がプールの清掃を手伝うなど、地域一丸で場所を守っています。
多世代交流の拠点
2000年代に入り、南永田団地では交流機会の減少による住民の孤立化や商店街の空き店舗化などによる、にぎわいの低下が課題となっていました。
そうした状況を改善するべく、2016年に立ち上がったのが、団地の活性化を目指す住民で組織する「永田みなみ台まちづくり運営委員会」。ワークショップの開催や他団地の先進的な取り組みを視察するなどの努力が実り、少しずつ、活気のある団地に戻っていきました。永田みなみ台まちづくり運営委員会は2018年3月にNPO法人「永田みなみ台ほっとサライ」に改称し、地域交流を促進するイベントを積極的に行っています。
その中の一つとして、団地内の商店街を活用し、2016年から2カ月に1回の頻度で開催される「つながり祭」は模擬店やゲームコナーなどで盛り上がります。永田台小学校の保護者や南永田学童クラブ、UR都市機構なども運営に協力し、地域一体となって多世代交流やにぎわいを創出しています。
子どもに活躍の場を
住民は団地の活性化とともに、まちの未来を担う子どもが地域活動にやりがいを感じられるように、地域の学校とコミュニケーションを取っています。2020年12月に行われたつながり祭では、永田台小学校の6年生(当時)が団地周辺を走るマラソン大会を企画。小学校を起点とした2種類のコースを考え、地元の景色を楽しみながら走りました。コースを紹介するマップと住民を元気付けるメッセージを書いた長さ約3mの横断幕を作り、注目を集めました。
また、地域の子どもたちは、まちをきれいにする清掃活動に参加。ゴミバサミを手に取って歩道を中心に、人目に付かない草むらなどに捨てられた空き缶やペットボトルなど、毎回、10kg以上のごみを拾います。ごみ拾いは団地住民との交流を深めるための時間でもあるようです。永田みなみ台ほっとサライの渡邊乃志男さんは「子どもたちに『永田みなみ台が故郷で良かった』と心から思ってもらえるような思い出づくりを大切にしています」と多世代の連携強化に取り組んでいます。
つながり祭コレクション
国際色豊か
南永田団地には、中国やフィリピンなどの外国にルーツを持つ人が暮らしています。
外国人の生活支援などを行うみなみ市民活動・多文化共生ラウンジやUR都市機構と協力し、言葉の壁を乗り越える交流イベントを企画。普段、あまり目にすることができないバングラデシュの伝統料理が提供されたり、太極拳で運動不足を解消するなど、国際交流が盛んに行われています。
外国出身の住民からは「知り合いが増えて、生活の悩みなどを相談しやすくなった」との声が上がり、取り組みの成果が出ているといえます。
“ほっと一息”できるサロン
永田みなみ台ほっとサライは2019年、住民に憩いの場を提供しようと、南永田団地内の商店街に「サロンほっとサライ」を設立しました。
日替わりのランチ、うどんセットのほか、トーストセットなどの軽食を食べられます。ゆで卵、しいたけ、かまぼこなどが入った「おかめうどん」はスタッフのおすすめメニューで、リピーターが続出しています。パウンドケーキやクッキーは種類が豊富で、ほどよい甘さで絶品。おやつに購入する人が多いです。
☆メニュー(価格は税込)
ランチ(火曜日、金曜日):500円
トーストセット(月曜日、水曜日、木曜日、土曜日):350円
うどんセット(木曜日):350円
菓子類:120円
入口の窓を彩る「ウインドウアート」は永田中学校の美術部に制作を依頼したもので、年2回、季節に合ったデザインに刷新して地域の注目を集めます。内装は小学生の習字や地元絵画クラブの作品が入れ替わりで展示されるなど、変化があって楽しいです。
スタッフ募集中
サロンほっとサライでは、オーダーの聞き取り、料理の運搬、会計などを手伝ってくれるボランティアスタッフを募集中。
サロンは団地住民以外の人々も利用するため、スタッフは地域交流の架け橋となります。サロンをオープン時から支える大門文子さんは「顔見知りが増え、団地での生活がより充実します。仕事をお手伝いする中で『あの人は元気かな』という感情が芽生え、それが誰かの孤立を防ぐ一助になります」と話し、やりがいがあるといいます。
環境保全に一役
永田みなみ台ほっとサライは、環境保全を促進する取り組みを行い、地域全体で自然を守る意識の醸成を図っています。つながり祭では、環境事業推進委員の住民が舵取り役になって、基準を満たした未使用食品を各家庭から集める「フードドライブ」を実施。集まった食品を地域の福祉施設・団体などに寄贈しています。
また、地域の未来を担う子どもたちが環境保護に貢献していると実感できる機会を創出。地域で配るエコバッグのデザインを考えてもらったり、土の中の微生物を利用して生ごみを消滅させる容器「キエーロ」の機能を教えています。子どもたちは、学んだことが海洋汚染などの環境課題を改善する一助になることを理解します。
永田みなみ台ほっとサライの歩み
2015年度
団地住民が行政などとともに地域の課題解決に取り組む「寺子屋みなみ」を実施。寺子屋みなみの活動を継続するため、「永田みなみ台まちづくり運営委員会」が結成される。
2016年度
・永田みなみ台まちづくり運営委員会は、団地の〝にぎわい〟と〝仲間づくり〟を目的に南永田団地内の商店街で「つながり祭」を初めて開催。ゲームコーナーやフリーマーケット、模擬店などが並び、2カ月に1回の頻度で行われる恒例行事となる。
・横浜市の介護予防交流拠点整備事業の活用を視野に検討を進める。
2017年度
永田みなみ台まちづくり運営委員会は補助事業の活用を見据え、NPO法人「永田みなみ台ほっとサライ」に改称。横浜国立大学と連携し、「地域全体に広がる福祉(多世代共生)のまちづくりデザイン」をテーマに学生のアイデアを取り入れながら拠点の空間デザインを検討。
2018年度
介護予防交流拠点事業補助金を活用し、拠点工事を実施。
2019年度
菓子や軽食などを提供する交流スペース「サロンほっとサライ」を開所し、内覧会やオープン記念イベントを開催。
2020年度
南永田団地で暮らす外国出身者が日本文化を体験する「多文化国際交流会」を初めて開催。翌年度はバングラデシュや中国にルーツがある団地住民が伝統料理や遊びを紹介するイベントが行われるなど、この交流会が地域の異文化理解を進めるきっかけになった。
2021年度
コロナ禍でもできる「まちおこし」を進め、つながり祭の企画を刷新。子どもたちの体験活動を考えたイベントに力を入れる。