横須賀のあちこちで開設 人と人を繋ぐ私設図書スペース

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横須賀のあちこちで開設 人と人を繋ぐ私設図書スペース
「衣笠駅徒歩1分図書館」

かつて「本」と言えば書店に直接行って、現金や図書券で買うケースがほとんどでした。しかしここ数十年で状況は激変。アマゾンをはじめとするオンラインショッピングでいつどこでも購入が可能となり、はたまた本自体をタブレットやスマホといったガジェットの画面上で閲覧できるデジタル書籍が台頭。最近では本の内容を音声で読み上げて伝えてくれる、〝耳で読む〟オーディオブックも支持を集めており、本のあり方自体が大きく変わってきています。また図書館や児童館、学校の図書室などで本を借りる読書の手段はこれまでと変わらずに続いています。

「知識の泉」から「心の懸け橋」に

そんな中、情報ツールとして長年利用されてきた本の役割にも変化が生じてきています。その一つがリユース。ただ単に古本として再び売買されるだけではなく、個人が自室から持ち寄った選りすぐりの作品を一カ所に並べて一般公開し、中には本物の図書館のように無償でレンタルできるプライベートライブラリーのようなスペースを設ける試みです。

  • 本に再び価値を与えてエコに繋がることに加え、自分一人では出会えなかった本と巡り合えるなど、楽しみ方も様々。全国的に広がりを見せる中、ここ横須賀市内でも徐々に浸透しています。今回はその中から3カ所の取り組みをご紹介します。

子どものよろずシェルター

2019年末、JR衣笠駅のプラットホームからも見える昭和期築のアパートに子どもたちが自由に過ごせる場所として開所した「衣笠駅徒歩1分図書館」。本を読むもよし、宿題をするもよし、友だちとお話をするもよし、遊ぶもよし、昼寝するもよし。大人にわからない子どもの悩みは子ども同士が理解でき、解決できるのでは―。そんな思いから実験的にスタート。心や身体に係わる様々なテーマでワークショップやオンラインイベントなども実施。本をきっかけに、子どもたちのシェルター的な役割を押しつけがましくなく、実践している場所です。

発起人の北川幸子さんは「開所当初は知名度もなく、地元との繋がりもほとんどなかったのでトラブルや事故のリスクも覚悟していたが、徐々に子どもたちにも知ってもらえ、賑わってきた。子どもだけでなく大人の方ともたくさんのご縁を頂け、たくさんに気付きを得られている」と話していました。利用日や時間は不定期で、フェイスブックやインスタグラム、入り口にかかっているホワイトボードで知ることが出来ます。

衣笠駅徒歩1分図書館
神奈川県横須賀市衣笠栄町2-66
https://www.facebook.com/kinugasa.Lib/
https://www.instagram.com/kinugasa_li/?hl=ja

「大人こそ読んで欲しい絵本」

京急線逸見駅から郵便局方面に歩き、東逸見町の山道をテクテク。道中ベンチを用意してくれている心優しいお地蔵さんの前を通り過ぎ、膝がガクガクと笑い始める頃にちょうどたどり着く、古民家を利用した「手しごとカフェ」。

こちらの一角に22年4月、絵本や図鑑といった児童書を集めた私設図書スペース「山の上のぼくら」が出来ました。ちょっと変わった名称。かつて子どもへの和歌を詠んだという歌人・山上憶良から肖った〝おやじギャグ〟だそうです。早くも文学的ですね。

発起人は東逸見町在住の関川日出雄さん。文学部出身でロシア文学に傾倒し、自身の子どもも読めるようにと絵本を買い始めたのが事の始まり。以来徐々に増えていった児童書をもっとたくさんの人に読んでもらおうと、「手しごとカフェ」の森木秀美さんへ相談したところ快諾。ペンネーム「いわなべ仙吉」名義の関川さん自筆作も並び、日に日に本が増えていっています。

カフェから横須賀港を一望できる絶景を前に本をペラペラと、気ままに読み進めていると、時間が経つのを忘れてしまいそうです。また5月上旬、関川さんから木製のブランコがカフェの庭に寄贈され、本を楽しむ場所が増えました。「本は人に読まれて価値が出る。児童書ながら大人も多くのことを学べ、楽しめるので改めて読んでみては」と関川さん。

開所日や時間は「手しごとカフェ」に準じます。毎週土・日・月曜日の午前10時から午後5時(5時から9時までと、水曜日の日中は予約制)。

山の上のぼくら(手しごとカフェ)
神奈川県横須賀市東逸見町1-10
電話 090-2533-3622
https://www.facebook.com/hcraftcafe/

絵本と文学書、2つの図書館

22年5月末、船越町の仲通り商店街にひっそりとオープンした「三本の木 子ども図書館」。元々音楽やリトミック教室のレッスンの場として使われている場所です。

代表の夏苅由希さんは元保育士。音楽のほか、絵本を自由に読める図書館を開きたいと、長年構想を温めてきたそうです。並ぶ絵本は全て夏苅さんが厳選したもの。音楽レッスンのスタジオ内で、まるで家の中のようなスペースを演出しており、そこで読み聞かせもできます。

またスペースの一角には3月まで上町商店街にあった本の交流拠点「上町休憩室」が〝船越出張所〟として新たに誕生。こちらは以前同様、小説や古書、絵画集、文学書といった、レアな書籍を並べています。

今後「子ども図書館」では読み聞かせやワークショップの開催も希望しており、「上町休憩室」と連動した企画にも夢を膨らましていました。開所日や時間は未定で、前の看板で情報発信を行っていくそうです。

三本の木 子ども図書館(上町休憩室 船越出張所)
神奈川県横須賀市船越町1-52
https://note.com/uwaq/

住所

神奈川県横須賀市

公開日:2022-06-03

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