樹木の間伐で使われた作業道をマウンテンバイク(MTB)コースとして活用する計画が小田原市内の山林で進められている。林業とアウトドアレジャーを組み合わせることで、地域の新たな観光資源化も期待される取り組みだ。
市内久野地域の山林約70万平方メートルの管理やMTBトレイルコースを運営する(株)T-FORESTRY(荻窪)が行っているのは、間伐作業時に造成される「路網(ろもう)」のコース化。メインの林道を起点に複数伸びる路網は材木を運び出す際に利用されるが、その場所での間伐が終わると使用されなくなる。これまでは次の間伐時に荒廃していた路網の維持を目的に、常設コースとしての整備を進めている。
山林にメリットも
「路網は重機で間伐材を運び出す道なので、4〜5mの幅があり、傾斜も緩やか。実はMTB初心者にも最適な道」と話すのは同社の鈴木毅人統括マネジャー。山中のコース整備は放置された竹が増殖する「竹害」の抑制につながるほか、山林に人が定期的に入ることで野生動物が里山に下りてくる「獣害」防止にもつながるという。
同社では現存する路網を使ったコース設定を進めており、断続した道と道をつないだ後、梅雨明けのタイミングで「Eバイク」と呼ばれる電動MTBなどで巡るコースをオープンさせたいとしている。
屋外レジャーの魅力発信を
コロナ禍以前、海外からの旅行者ニーズは飲食や物品の購入から訪問地での体験を楽しむ「モノからコト」に替わってきていた。また欧米ではMTBをレジャーとして楽しむ文化が多世代で定着しており、同社では再び増加が見込まれる外国人旅行者の、観光とは別の視点からの取り込みを目指す。
鈴木統括マネジャーは「旅先でスポーティに遊ぶ志向を県西地域に持ち込みたい。小田原は海も山もあるがまだ活用しきれていない。これら魅力を国内外に発信して『サイクルツーリズム』という観光資源で県西地域を結べたら」と話している。