収玄寺(長谷)は、鎌倉期に北条光時(みつとき)(2代執権・北条義時の孫)に仕え、日蓮に深く帰依した四条金吾(しじょうきんご)(頼基(よりもと))の屋敷跡に、江戸後期に建てられた収玄庵に始まる。境内には、日露戦争で連合艦隊を率いた東郷平八郎が揮毫(きごう)した「四條金吾邸址」の石碑が建つ。
新春、蝋梅(ろうばい)が甘く香り始める頃、境内の其処此処(そこここ)で真っ白な水仙が咲き始める。本堂左の河津桜がほころぶと、黄色い山茱萸(さんしゅゆ)や紅白の木瓜(ぼけ)なども咲き始める。
春が進むと、本堂右の杏子(あんず)が濃桃色の花を咲かせる。しばらくすると、染井吉野や枝垂桜も咲き始め、桜が終わる頃には、薄紅色の花水木や、鮮やかなピンクの万作、さらには薄紫色の藤などの花々が境内を彩る。
初夏の頃には、赤い躑躅(つつじ)や球形の白い花を咲かせる大手毬(おおでまり)が境内を飾る。そして紫陽花。本堂左を中心に、額紫陽花や柏葉(かしわば)紫陽花など、多種多様で色彩も豊かな花々を咲かせてくれる。また、境内の所々で、薄紫色の藪蘭(やぶらん)や紫君子蘭(むらさきくんしらん)が涼しげな花を付ける。
盛夏の頃は百日紅(さるすべり)。真夏の太陽の下で真紅の花を咲かせる。夏から秋にかけては、ピンク色の芙蓉(ふよう)が咲き始め、秋が進むにつれて、薄紫色の紫苑(しおん)や秋明菊(しゅうめいぎく)が花を付ける。そして晩秋、境内入口の櫨(はぜ)の木がその葉を真っ赤に染めていく。
銅葺屋根の本堂も美しい収玄寺。カフェも備えた境内では、四季折々の花々が咲き揃い、訪れる人々の心を優しく癒してくれる。
石塚裕之