三浦の代名詞といえば、新鮮なマグロを思い浮かべる人も多いだろう。市ふるさと納税の返礼品で、金額・件数ともに常に上位に入る人気ぶりだ。
国立研究開発法人水産研究・教育機構(横浜市)は10年以上前、このマグロに多く含まれる抗酸化成分「セレノネイン」を発見した。活性酸素を除去する機能が高く、マウス実験では生活習慣病改善などの効果が見られた。人への有効性も検証しようと、神奈川県水産技術センター(城ヶ島)と学校法人聖マリアンナ医科大学(川崎市)を加えた3者は、2021年9月から共同研究を実施。県職員や同大関係者100人を対象に、一般的なマグロの刺し身と背身と腹身の間にある赤黒く固まった部位「血合い」の2種類を週3食(1食あたり80〜120g)、3週間食べてもらい、血中に蓄積するセレノネイン濃度やストレス度、老化抑制遺伝子の活性などを測定した。特に血合いを食べた摂取者に効果があり、22年6月には日本抗加齢医学会で発表した。
これに着目した市内のマグロ関連団体は7月、マグロの産業振興と地域活性化を図ることを目的に三浦商工会議所に事務所を置く「まぐろ未病改善効果研究会」を設立。三崎水産加工業協同組合の山本浩司さん(羽床総本店代表)が会長に就いた。
「健康食マグロ」を新たな価値として掲げた研究会は11月、キックオフイベントを開いた。会場となった三浦市民ホール(うらり2階)には、漁業者や加工業者、飲食業者などの研究会メンバーや行政関係者ら約100人が参加した。共同研究に携わってきた各機関の代表者が登壇し、これまでの成果をスクリーンに投影。セレノネインは、血圧上昇に関与する酸素の阻害活性やシミの原因となるメラニン生成の抑制といった健康増進につながる効果などを報告した。県水産技術センター企画研究部の臼井一茂さんは「血合いと三浦の豊かな食材を組み合わせた薬膳的な観点も取り入れ、地域医療や療養食などへの活用も進めていきたい」と展望を語った。
ただ血合いは生臭くなりやすく、料理に使用されるケースはそう多くないため、市内の飲食店が食べやすく工夫を凝らした料理を振る舞う試食会もあった。さかな料理まつばら①「血合いの刺身」、羽床総本店②「ミサキ串カツ」③「三浦シチュウ」、くろば亭④「血合いのミラノ風カツレツ」、港楽亭⑤「カジキとまぐろの血合いのシュウマイ」、三崎地魚まぐろ料理海舟⑥「血合いのステーキエスカルゴ風」が並び、参加者はそれぞれの味を確かめながら血合いの理解を深めた。50代男性は「臭みは感じず、むしろ変わった食感で美味い。見た目も食欲をそそるものばかりで素晴らしい」と称賛した。
研究会に所属する約20人は、今後も市内の飲食店での血合い料理提供などを推進していく。