JR逗子駅から徒歩9分。山を背負った緑が茂る閑静な住宅街の一角に今秋、生活や暮らしをアートと捉えたコミュニティスペース「Art of life 山の音」が誕生した。
もともと、ここは逗子市出身のDJで音楽プロデューサーの高木完さんが幼少期を過ごした場所。築67年という2階建ての古家の扱いを思案していた高木さんが、友人で不動産業を営む福井大輔さんと佐々木晴美さんの2人に相談したことで活用に向けたプロジェクトがスタートした。
高木さんは10代の頃、当時の先端の音楽とファッションだったパンクロックに傾倒。この場所から通った東京の学校で様々な表現のスタイルに触れ、今に繋がる原型を形作っていった。そんな当時の自分を思い出させてくれる空間かつ、集まった人たちで何かを生み出していくことが高木さんの理想。ミーティングを重ねながら「暮らしを楽しむことをみんなでシェアする場」のコンセプトが固まった。
改修はリフォーム工事の経験のある福井さんを中心にDIYで実施。自然の風を感じるためのウッドデッキはクラウドファンディングで設置費用の協力を呼び掛けて完成させた。
現在は部屋ごとにコンセプトを持たせてカフェ、ギャラリー、レンタルスペース、アメカジの古着店と多目的に活用している。これから手を入れるスペースもあり、「集まる人たちの意見やアイデアを聞きながら使い方を固めていく」と福井さん。立派な樹幹のケヤキが存在感を放つ約170坪の庭にピザ窯を設置することや古井戸を再生し、災害時の避難拠点として機能させていくことも考えている。
高木さんが訪れる日もある。この日は40年来のファンという女性が現れ、高木さんの主演映画や音楽談議に花を咲かせていた。近隣住民の生活リズムを崩さないことを前提に「トークイベントなども手掛けていきたい」と高木さん。人と人の繋がりを大事にするアナログ感覚の心地よい空間をつくりだしていく。