お天気キャスターで防災士の資格を持つ、木原実さんをインタビュー。気候変動や環境問題の視点からSDGS目標に向けてどのように対策を取るべきかを語ってもらいました。
木原 実さん
- 1960年生まれ。現在64歳
- 藤沢市で育つ。神奈川県立厚木高校を経て、日本大学芸術学部演劇学科卒業。
- 気象予報士、防災士、俳優、声優として活躍。
- 日本テレビ系「news every.」お天気キャスターの活動は特に有名。マスコットキャラクター「そらジロー」とのかけあいが人気。
- （一財）防災教育推進協会理事
※この記事は2025年5月時点の情報です
ＳＤＧｓをどのように評価されていますか。また、達成目標年２０３０年まであと、５年に迫っている状況です。
大前提として私はＳＤＧｓの理念は大賛成。しかし、ゴールまで５年は時間的に厳しいです。
その理由は。
例えば国は環境・エネルギー問題に『車に乗るのをやめよう。公共交通機関を使おう』と呼びかけます。 でも多くの人は不便だから応じません。長年の習慣はそう簡単に変えられないんです。無理をしない手法でゴールに近づけることを目指す方が現実的です。
具体的に何をすべきでしょうか。
気候変動対策でいえば、再生可能エネルギーの技術革新でしょう。既存の化石燃料や原子力はリスクが大きい。始めたばかりの技術でノウハウが蓄積されていませんが、風力・太陽光の積極的活用をのぞみます。
ＳＤＧｓを提唱した国連が音頭を取って世界の科学技術を結集し、前進させていくことも一案です。残念ながら、ガザやウクライナの戦争もあり、世界はそれどこではない状況です。しかし、 ＳＤＧｓを本気で達成させるなら、世界のありようを考え直すべきです 。
日常生活見直しを
私たちの日常生活でできることは。
まずはごみ削減です。 ご家庭の冷蔵庫の中で消費期限が切れてるものありますよね。 あれ全くの無駄。一生懸命お金と手間をかけて作った野菜、海で採ってきた 魚が捨てられていく。消費期限を見て必要以上 に買わないだけで済む 。
室内の消灯にはみなさん熱心ですけど、食料を捨てることにあんまり罪悪感がない。まずそれをやめませか。僕は食いしん坊でケチん坊。落ちているものでも食べますよ（笑）。
現在の日本は豊かなので、つい食べ物を粗末にしがちですね。
色々調べてみると、江戸時代って究極のエコなんです。資源を無駄にしない。着物一つでも擦り切れるまで着るんです。縫い目を解いて、布一枚の反物にまで戻す。最後には焚き付けにするんです、カマドの。その灰を肥料屋さんが買いに来る。で、農家さんに売ります。全部回っている。ただしそれができたのは、人口が少なかったから。今の日本では無理。『暗くなったら寝る』には戻れないんです。だからこの便利さと経済性を維持したまま地球に無理をさせずに永遠に続くようにするのは、科学技術の革新が必要です。ただすごく時間がかかります。
気象予報士として現在の地球環境をどう見ますか。
人間の力では気候変動を止められないだろうと思っています。コンピューター上の計算ではじりじりと温暖化しているんですが、実際は急上昇している。一方、この冬の西日本は極寒だった。自然は予測不能な変動を大きく起こします。温暖化で海水温も上がり凄まじい台風が来ると言われています。
実際、海水温は過去ないぐらい温まっています。 けどれども未だに1934年の室戸台風、1959年の伊勢湾台風超える台風は来ていないわけです。では異常気象とどう向き合うか。僕は対処療法だと思っています。その環境に人が適合していくこと。ＳＤＧｓ的な対策を進めつつ、寒波や大雪、熱波や洪水に備える。天気予報は効果があります。
木原さんは神奈川県で育ちました。
藤沢です。厚木高校が母校です。神奈川県は都市と自然がうまく折り合いがついている印象です。地震災害の面から見ると、平野が多くて非常に安定しています。
ただ箱根や小田原には関東大震災のとき、大津波がありました。注意をして欲しいですね。
最後に読者にメッセージを。
私は防災士でもあります。みんな喉元過ぎるとすぐ忘れる。だから何度も伝えていかなきゃいけない。準備できるのは災害の発生前、地震なら揺れる前です。
命を守るため、今やれること全部やって備えてください。繰り返しますが、人間のできることは限られています。しかし、知恵とお金を戦争や軍拡でなく、科学に投入すれば、安全で素敵な地球になります。みんなで実現させましょう。
