「山田太一のバトンを繋ぐ会」
2023年11月に亡くなった脚本家、山田太一さん(本名・石坂太一=いしざか・たいち/享年89歳)の遺したものを次世代に役立ててもらおうと、有志らが新たに組織を発足。(公財)放送番組センター主催による「上映展示会」を皮切りに、貴重な資料の寄贈や、書斎の再現などさまざまな企画が順次行われる。
山田太一さんは「男たちの旅路」や「ふぞろいの林檎たち」といった数々の名作ドラマを生み出した希代のヒットメーカー。若い頃から高津区に自宅を構え、多摩川などを舞台にした代表作「岸辺のアルバム」を作りあげたほか、川崎市名誉文化大使に長年就くなど、文字通り「地元ゆかりの著名人」として名を馳せる一方、飾らぬ気さくな人柄で地域住民などとも交流を深めていた。
次女が代表に就任
逝去から2年が経ち、先頃親族のみで3回忌法要を執り行ったことをひとつの契機に、同氏の遺したものを次世代に役立ててもらうことを目的とした組織「山田太一のバトンを繋ぐ会」が新たに発足した。
山田作品に長く携わってきたテレビプロデューサーなどが名を連ねるこの会の代表に就いたのは、次女の長谷川佐江子さん。「父は生前『自分の幸福も大事だけれど、次の世代に何かを渡していく、前の世代と次の世代の自分は”つなぎ目”なんだ』と話していました」と組織発足に繋がったエピソードを明かす。
今後は、こうした故人の思いと数々の遺品を後世に引き継ぐべく、さまざまな企画が各所で予定されているという。
「上映展示会」
新たな組織発足後、最初に手掛けるのが、(公財)放送番組センター主催で12月12日(金)から「放送ライブラリー」(横浜市)で行われる「上映展示会」の共催。2026年2月11日(水)までの会期中、山田太一さんが脚本を担ったテレビドラマ全作品を紹介するほか、台本や直筆原稿、愛用品などが展示される。また名作ドラマも多数上映される予定となっており、関係者は「市井の『名もなき人々』の日常を見つめ続けた山田氏の世界を作品上映と展示で伝えられれば」と話し広く来場を呼び掛けている(入場無料)。

放送ライブラリーの上映展示会の詳細はこちら。
原稿寄贈、記念碑建立も
また今後、同氏の母校でもある早稲田大学の演劇博物館にドラマ、戯曲の直筆原稿や読書ノートなどを順次寄贈するほか、2026年1月には同館主催による山田作品の連続上映も予定されている(詳細は後日発表)。
さらに小説の直筆原稿については神奈川近代文学館(横浜市)に寄贈する方針。10歳から18歳までを過ごした湯河原町の町立図書館では「書斎」を再現する企画も進行中だという。

地下階に保管されているシナリオや資料など
前出・長谷川代表は「3回忌を契機に『山田太一の碑』を円真寺(川崎市幸区幸町3の711)に建立したので、父の思いを形にして未来へ繋ぐ大切な存在として頂ければ」と、願いを込め話している。

幸区・円眞寺に建立された記念碑










