パソコンやタブレットひとつで仕事ができるようになった今、企業や組織に縛られることなく、住みたい場所で、多様な働き方をする若者が増えています。
そんな中で注目されているのが、茅ヶ崎市東海岸南2丁目にあるフリーランス向けのシェアハウス『ノマド家』です。開所当初から常に満室をキープ。3年目を迎えた現在は「フリーランスの自立・キャリアを支援するシェアハウス」として話題となり、入居待ち登録者数は100人を超えます。潜入インタビューを行い、その魅力に迫りました。
フリーランス向けのシェアハウス「無いなら作ろう」
茅ヶ崎駅南口の「雄三通り」近くの閑静な住宅街にある6LDKの一軒家『ノマド家』。入居者はフリーランス限定で、ライターやエンジニア、ブロガー、マーケターなどのWeb系フリーランスや独立を目指す20〜40代が6〜8人で生活をともにしています。「ノマド家は、自分がフリーランスになる前に『あったらいいな』と思ったサポートを全て詰め込んだシェアハウスです」。
こう語るのは発起人で代表の辻本拓磨さん(26)です。同志社大学を卒業後、新卒で入社したリクルート社では主に学習コンテンツの営業を行ってきました。その傍ら、週末はライターとして活動も。その後しばらくすると、「そろそろ独立を」と考えるようになりましたが、「先輩からのフィードバックが充実した企業だっただけに、先輩に気軽に相談できたり、仲間と切磋琢磨しながら成長できる環境を失うのは怖かった」と吐露します。
そこで、「フリーランス向け」という触れ込みのシェアハウスを探しましたが、どれも望む環境ではなかったと言います。
そこで、「無いならば、自分で作れば良い」と考え、辻本さんは実際に行動に移します。
立ち上げにあたって、フリーランス志願者に「住みたい街」をヒアリングをすると、6割が「湘南」という回答に。電車1本で都内へ通える点も踏まえ、鎌倉駅徒歩圏で”ノマド(遊牧民)”限定のシェアハウスを誕生させました。
入居者の自立・キャリアを支援
ノマド家の強みは、何といっても辻本さんの社会人経験や、ライターやWebディレクターなどフリーランスとしてのスキル・ノウハウにあります。それは60枚に及ぶ『フリーランス自走マニュアル』として住人に提供されています。
「フリーランスになって挫折する理由は、『孤独』と『ジリ貧』です。ライティングなどの作業系の業務は孤独を感じやすく、また、単価を上げても月収20〜30万円が限界です」ときっぱり。辻本さんオリジナルのマニュアルでは、「収入が上がりつつ、仕事が減る仕組み」などを図式を交えてわかりやすく解説しています。
初期メンバーで現在は管理人を務める水谷優斗さん(26)は、「会社員を辞めてスキルが全く無い状態で入居しました。駆け出しフリーランスにとって良い環境が整っていて、仲間に助けられながらWebのスキルを高められたので、とてもありがたかった」とその魅力を語ります。
「幸福度が高い」茅ヶ崎へ移転
19年5月には、働きやすさ・住みやすさを求めて、鎌倉から茅ヶ崎へ。「茅ヶ崎はカフェやコワーキングスペースが多いし、圧倒的に住みやすい」と辻本さんは頬を緩めて、こう続けます。
「初めて茅ケ崎駅で降りた時、下を見て早歩きしている東京の人と顔つきが違って驚きました。ローカル感があって、人も温かく、朝散歩するだけで幸福度が高いです」と絶賛します。
「ノマド家では、共同生活のほか、フリーランス同士のコミュニティを通じて、スキルを共有したり、クライアントを紹介し合って新たなビジネスにつながることもあります。特に、湘南エリアはそのポテンシャルが高いので臆せず飛び込んで欲しいですね」とエールを送ります。
【この記事はタウンニュース茅ヶ崎版(2020年7月17日号)掲載分を加筆・修正したものです】
▼続く【その2】では、個性豊かな住人やその暮らしぶりについて紹介しています。