家族や友人、地域の行事などを収めた古い映像を地域で上映し、その記憶を呼び覚まして共有する「ホームムービーデー」を開催しようと、葉山町の若者たちが準備している。映画への熱い情熱を持つ発起人に、地元の「先輩」たちも協力。「家に眠るフィルムがあったら、ぜひ連絡を」と呼び掛けている。
子どもの成長記録や地元のお祭り、今となっては少し恥ずかしい自主製作映像、そして何気ない日々――。ホームムービーデーは、8㎜フィルムに収められたこうした映像を持ち寄り上映するもので、10月第3土曜日に世界17カ国100都市で行われている。国内では青森県や山形県、大阪府のほか、東京都の京橋や調布などで実施されている。
この企画を葉山で開催しようと奔走しているのが「シネマチェルキオ葉山」を立ち上げた髙木雛さん。堀内のイタリアンレストラン菊水亭の5代目に当たる26歳だ。
子どもの頃から祖父母が語る葉山の昔話や古いアルバム、そして映画が好きだった髙木さんは、日本大学芸術学部映画学科を卒業。現在は日本で唯一の国立映画機関「国立映画アーカイブ」の展示・資料室に勤めている。岩波ホール(神保町)と鎌倉市川喜多映画記念館で映写技師としても活躍している。「記憶の記録である映画が大好き」と語る髙木さん。「上映をきっかけに見ている人同士で会話が生まれ、地域の記憶が紡がれる。そんなかけがえのない場を共有することができたら」と笑顔で話している。
夢への一歩 周囲が後押し
髙木さんは今年1月に団体を立ち上げ。学生時代に兄や姉のように慕っていた「地元の先輩」がメンバーに加わった。「企画の話を聞いたとき、ついに動き出したと思いました」と笑いながら話すのは菊水亭の元アルバイトで都内在住のグラフィックデザイナー・杉浦杏奈さん。小さいころから「いつかは映画館を作りたい」と語っていた髙木さんをサポートしようと、今回はグッズ制作を担当する。
同じく元アルバイトで地元を盛り上げようと情報発信などを行っている新舘賢太さんは広報を担当。「すごく面白い企画で即答でした」と振り返る。また、葉山出身で髙木さん父の大親友でもある「激弾BKYU」の有友正隆さんと東野醒子さんがイベント全体のサポートを担う。
フィルムの提供を呼び掛けるチラシを手づくりし、4月3日に新聞折込で町内全域へ配布した。すでにかつての海水浴や森戸神社に七五三参りする様子などが収められたものが集まり始めているという。募集対象となるフィルムは8㎜のほか、9・5㎜と16㎜。上映会後に返却される。DVDなどデジタル化されている場合も受け付ける。岩波ホールに勤める先輩から上映会開催時の機材や設備面の協力を取り付け、映写機等の手はずも整えた。
「内容がわからない場合や状態が悪い場合もご相談を。私的でちょっと恥ずかしいと思うものこそ、この企画や地域にとって価値がある。葉山の皆さんと共有することでかけがえのない財産になるので、ぜひお寄せください」とメンバーたちは呼び掛けている。
現在、SNSで最新情報のほか、寄せられたフィルムの映像から場所を当てる「クイズ」も実施中。DMでの問い合わせも受け付ける。「ホームムービーデー in葉山」で検索。
フィルムの引き取り方法などは直接調整する。問い合わせはcinemacerchio.hayama@gmail.com、または046・875・0046(菊水亭内、㈭除く)