漫画やアニメ、ゲームなどに代表されるサブカルチャーを活用した地域振興をめざす民間団体のサブカル活用推進委員会と一般社団法人横須賀市観光協会は、オリジナルキャラクターを創り、漫画化などの目標達成の過程を共有していく参加型プロジェクトを始動させる。横須賀色を強く打ち出したストーリーを用意し、キャラクターの愛着度を高めることで地域の知名度アップと交流人口の増加につなげる。
サブカルを活用した地域活性の取り組みでは、横須賀市が市内を舞台にしたアニメ作品などとタイアップしたアニメツーリズム企画を進めてきた経緯がある。これを民間の立場で推進していこうと2年前、市内の事業者が同委員会を発足させた。昨年は同観光協会と連携し、釣りをテーマにした作品で横須賀が舞台の一つとなっている『スローループ』とのコラボを積極展開。コロナ禍ではあったが、ファンの来訪やグッズの販売などで一定の成果があったという。同委員会の鈴木孝博会長は「ファン層の拡大など、サブカルへの注目度は以前にも増して高まっている。上手く取り込むことで”聖地化”と呼ばれる地域ブランドを確立できる」と期待を込める。
今回の「横須賀サブカル娘プロジェクト」では、「海崎(かいざき)ラン」と猫の「クロ」のオリジナルキャラクターを先行発表。『はいふり』の漫画作品で知られる阿部かなり氏に制作を依頼した。
既成の作品は制作会社や運営会社の意向に左右されやすく、グッズ開発やイベントの実施などで制約を受けるケースが少なくない。独自の作品を仕立てるのは自由度の高い活動を展開するためだという。同委員会には、サブカルを活用するノウハウの蓄積もあり、キャラクターと作品をファンと一緒に作り上げていく戦略を描いている。
3月17日(金)からは「クラウド缶ディング」と銘打った応援企画をスタートさせる。クラウドファンディングと缶バッジを掛け合わせた造語で、今回のプロジェクトの資金調達を目的としている。キャラクター入りの缶バッジ(1個700円)を購入すると売り上げの一部が新キャラクターの制作やプロモーション費用などに充当される仕組み。第一弾として70万円を目標にしている。取り扱いは横須賀海軍カレー本舗ほか市内8店。
同観光協会のHP(【URL】https://yokosuka-kanko.com/)に詳細情報。
「永続的な活動が肝要」聖地会議の柿崎俊道さん
地域発のマンガやアニメのコンテンツを地域活性と結び付けて、成果をあげている事例はいくつもあります。
代表的なところでは、熊本県のPRマスコットキャラの「くまモン」が有名です。市内在住の小田恭央さんが運営している東北地方を応援するキャラ「東北ずん子」、岐阜県多治見市の伝統工芸品である”美濃焼”の魅力を女子高生が伝えるアニメ「やくならマグカップも」、岩手県の景観や文化、人々の営みを複数の作家が漫画で紹介していくコミック誌「コミックいわて」なども広く知られています。
横須賀のプロジェクトは、地元在住者として私も応援しています。ただ、数多あるアニメ、ゲーム、映画との比較が避けられなく、ファンから選ばれる存在にならなければなりません。誰もが知る人気作に共通しているのは永続的な活動。10年、20年どころか、半世紀に迫るものも珍しくありません。息の長い活動を願ってやみません。
(「聖地会議」/アニメ聖地巡礼に特化した活動を展開する民間事業者)