「居場所づくり」を目指す、福祉の総合センター
2022年6月に誕生した、「NPO法人Monolith」。Monolith(モノリス)とは『一枚岩』のこと。「介護や支援をする人、受ける人。全ての人が継ぎ目のない一枚の岩のようになれればと思って。支援を受ける人も、ある時は支援をする側になる時もある。それぞれに役割を持ち、自身の価値を確認できればいいなって。そんな思いも込められています」と理事長の横山雅弥さんは名前の由来を教えてくれました。
地域の人たちが楽しみながら互助の関係を繋いで広げていき、継続することができるような、そんな「居場所づくり」が、モノリスのビジョンだと言います。「福祉の総合センターを目指している、と言ってもいいかもしれませんね」と横山さんは笑顔で言います。
- 「福祉の総合センター」ってなんだ?モノリスってどんな法人?
早速、潜入取材開始!
【コンテンツ】
◆まずはイベントに行ってみよう
◆就労継続支援B型事業所「Work_With_モノリス」
◆「よろず承ります」
◆横山理事長を知ろう
◆「NPO法人Monolith」は・・・
まずはイベントに行ってみよう
橋本公園とサン・エールさがみはらで6月2日(日)、「福祉カーニバルin橋本」が開催されます。時間は午前11時から午後3時まで。
「社会参加と地域交流!」「地域の福祉事業者と顔見知りになってもらいたい!」をテーマに、バルーンアート体験やアイシングクッキー作り、マジックショー、似顔絵コーナーに塗り絵コーナー、おもちゃ広場や不用品無料回収コーナー、キッチンカーや飲食・物販ブース、地域内の事業所を紹介する発見マッピングの展示など、盛りだくさんの内容。
ポスターを手掛けたのは、モノリスに通う石田さん!実行委員の代表は、モノリス代表・横山さんが務めています。みんなで遊びに行ってみよう!
就労継続支援B型事業所「Work_With_モノリス」
橋本駅から歩いて約8分のビルの一角に、モノリスが運営する就労継続支援B型事業所「Work_With_モノリス」があります。「B型事業所」とは、障害などにより企業などへの就職が困難な人たちに働く場所を提供するところ。ここで働きながら、就労に必要な能力を高め、企業などへの就職に繋げるという目的もあります。
内職に屋外業務、時には依頼者との打ち合わせにも同行
モノリスには現在、17人の利用者さんがいて(定員は20人とのこと)、午前10時から午後15時30分までの間で、その人に合った働き方をしているそう。午前中だけ、午後だけ、週に1回など、無理なく働ける環境が整っているようです。事業所へ取材に伺った時には、ちょうど、クリーニング店から依頼を受けた衣類のたたみや仕分け作業をする人たちの姿が見えました。チラシやパンフレット、名刺を作ったり、SNSへの投稿やフリマアプリの出品などを行うPC業務の人も。事業所内でする「内職」だけでなく、企業の車両洗車や公衆施設のトイレ掃除、お菓子作りや不用品回収などの屋外業務もあるそう。また、モノリスでは一般的には珍しい、依頼者との打ち合わせや契約に、利用者さんが同行することもあるんだって。「ただ私たちスタッフから言われた仕事をするだけでは、誰のために、何のために仕事をしているのか分からなくなると思ったんです。依頼者の顔が見えて、全容が分かれば『やりがい』に繋がるんじゃないかな」と横山さんは言います。
ろうそくでアロマキャンドル作り
「あ、そうだ」と言いながら、横山さんが見せてくれたのは富士山をモチーフにしたかわいいアロマキャンドル。葬儀屋さんから「葬儀や法要で数時間しか使用しない大きなろうそくを、毎回捨ててしまうのがもったいない。何か活用できないか…」と相談を持ち掛けられて、リユースすることを思いついたそう。まさにSDGs!モノリスは「さがみはらSDGsパートナー」の登録団体でもあるから、日ごろから「持続可能」な取り組みには積極的とのこと。かわいいアロマキャンドルは今後、イベントなどでの販売を計画中だそうです。
「ウィッシュデー」と「月1000円昼食」
モノリスには利用者が生き生きと毎日を過ごせるよう、毎月1回「ウィッシュデー」を開催。利用者の「買い物に行きたい」「旅行がしたい」「美味しいものが食べたい」など、希望を叶える日(取り組み)で、「その日を楽しみに働いて、コツコツ工賃を貯金している人もいるんですよ。ウィッシュデー当日には本当にみんな楽しそうで。私たちスタッフも笑顔になります」と女性スタッフは笑顔で言います。モノリスにはもう1つ、うれしい取り組みが。それが「毎月1000円昼食」。毎月1000円支払えば、月に10日でも20日でも、主食+おかず+汁物が食べられるというもの。これはうれしい!毎日励みになるし、事業所に行くのも楽しみになりそうです。
「よろず承ります」
よろず屋「ものりす」
モノリスは無償・有償運送事業や医療・福祉・健康全般の相談支援にも取り組むほか、「よろず屋」として高齢者の介護やゴミ屋敷問題、子育て支援など、あらゆる地域の相談事の窓口にもなっていて、まさによろず屋稼業。障害の有無に限らず、地域全体で継続的に助け合っていく関係を築いていきたいんです。地域の人、みんなの『居場所づくり』を目指しています」と清々しい顔で横山さんは話します。
地域イベントへ参加
横山さんは利用者が次のステップに進めるよう、「地域の人たちとふれあい、関係性を築きたい」と考え、2022年から、地域で開催されるイベントの参加を始めたそう。淵野辺の「銀河まつり」に出店した時には、手作りのお菓子やフルーツサイダーが大好評だったとか。「介護や福祉の関係者だけでなく、地域の商店街や団体の人たちとも連携してネットワークをつくり、福祉の総合センターを目指したいんです」と横山さんは熱く語ります。
仲間と力を合わせ「ゴミ屋敷」の片付けボランティア
横山さんのもとには、さまざまな人が相談に訪れます。ここ最近増えているのが「『ゴミ屋敷』の片付けですね」と横山さん。一人暮らしの高齢者や障害者が、年齢や障害によって家の片付けができなくなってしまうことが多いそうです。宅配や新聞の配達員がゴミの中で倒れている家主を発見する例や、ケアマネジャーなどが、入院中の高齢者の退院時に家の状況を知ることも。
ゴミ屋敷の相談がくると、横山さんはSNSなどを使って仲間たちに協力を呼び掛けます。介護従事者や医療従事者、福祉施設や地域包括支援センターに勤める人など、幅広い世代、職種の人たちが横山さんと共にボランティアで家を片付けます。今までに緑区で2軒、中央区と南区で各1軒ずつの家を片付けたそうです。昨年、横のつながりを深めるために横山さんが仲間と立ち上げた「みんなのさがみはらネットワーク」(通称:みんさが、横山さんは副会長)のメンバーも協力しています。
その中から、横山さんに南区の事例を聞くと「玄関扉を開けるとゴミが崩れ出てくるような状態。そのほとんどが新聞やチラシなどの紙類でした。室内には天井に届くくらい、ペットボトルが積み上げられていて…」と、当時の様子を振り返ります。約8日で片付けが終了し、その後は床張りやトイレ・浴室、居室も清掃。作業は10日間にわたり、総廃棄量は約3トン、協力者数は約60人だったそうです。横山さんは「『ゴミ屋敷』は、これからもっと増えていく問題かもしれない。今後も地域の人たちの支援や、仕組みの構築、制度づくりに力を尽くしたい」と語ります。
【南区の片付けに参加した仲間たち】※敬称略
◇相模台第1地域包括支援センター(寺田卓)
◇小山地域包括支援センター(高橋剛)
◇千代田介護支援センター(日高明夫、菊地歳光、菊地光子)
◇あかりの森ケアプランセンター(伊藤幸智)
◇居宅介護支援事業所コルク(小池恭子、土田陽子、大網千尋)
◇生活支援ステーションじょんのび(王丸由起子)
◇スマイル倶楽部(野崎竜人)
◇相模原市医師会訪問看護ステーション(荒川雅子)
◇介護タクシーなないろ総合福祉(山本直広、幕田滋)
◇介護老人保健施設とき(川崎典子)
◇SOMPOケアラヴィーレ南町田(森田洋介)
◇NPO法人結プロジェクト(加藤禎、浅井久瑠美、堀川樹、西田正道、鈴木寛孝)
◇NPO法人まほろば(舛田和生)
◇訪問美容サービスMUSUBI(村木代志美、村木彰悟)
◇クロスディライト(竹内義則)
◇相模原市社会福祉協議会(歌丸浩一)
◇合掌苑第2居宅介護支援事業所(川名俊樹)
◇リハ・フィット・すまいるらいふ(松崎貴義)
◇メディケアセンター相模原(三浦啓介) ※その他匿名の協力者多数
横山理事長を知ろう
35歳の若さでNPO法人モノリスを立ち上げた、横山雅弥理事長。名刺には…介護福祉士、美容師、サービス管理責任者、茶道裏千家初級、花芸安達流「水」の証、心理カウンセラー1級、コーチング1級って書いてある!いったい横山さんてどんな人なの?じっくり話を伺いました。
介護福祉士の道を志す
福島県出身の横山さんは、おばあちゃん子だったと言います。テレビで見たドキュメンタリー番組をきっかけに福祉の道に興味を抱き、介護福祉士を目指して福祉課のある高校へと進みます。しかし、「楽しいことがいっぱいあったのかな、4年も高校に通ったけれど卒業しても資格は取れなかったんだよね」と笑い飛ばします。在学中、介護施設や美容室でのバイトをしながら脳裏に浮かぶのは「やっぱり福祉っていいな。自分で介護福祉士と美容師の資格を取れば、おじいちゃん、おばあちゃんを奇麗にできる!」の思い。その思いを現実にするため、介護福祉士と美容師の両方を取得することができる学校を八王子に見つけた横山さんは、八王子に転居。資格取得のために3年間通います。夢を叶え、22歳で福祉の道へ。介護福祉士として身体や精神上の障害がある人の介護をし、時には美容師の資格を生かしボランティアで髪をカットすることもあったといいます。たくさんの医療や福祉従事者、介護を受ける人たちと出合ううちに、「自分の思い描く福祉サービスを目指したい。起業したい」と願うようになったそうです。そんな時、自分の身に異変が起きます。
自らが視覚障害者に
起業を思い立った31歳の時、目に違和感を感じたという横山さん。「始めは片目だけだったんだけれど、次第に両目がほとんど見えなくなって」。視力は0.01以下、全体がぼんやり白い曇りガラスに包まれたような視界だそうです。視覚障害者となったことで、起業は無理だと諦め、介護する側から受ける側へと変化した自らの身に起きたことを「受容」するまでに約2年の月日を費やしたそうです。「もう働けない」と思い悩みながらも、次第に自分が「人と話すことが好き、人と接することが好き」だと思い出したと言います。そこから、一念発起。求人募集をしていた介護施設の理事長に「働かせてください!結果が出るまで無給で構いません」と直談判し、見事1年間、人事の仕事をやり切ったそうです。「給料は最初からもらえましたけどね」と笑顔。2年目には施設長に抜擢され「それが自信を取り戻すきっかけになった」と振り返ります。
起業、モノリス設立へ
自信を取り戻した横山さんは一度は諦めた「起業」の夢に再び向います。「自分が当事者になってみて気づいたことがたくさんあった。働くことに困った時、自分には仲間がいた。でもきっと、SOSを出せずに内にこもってしまう人もいると思うんです」。働きたくても働けない人、居場所を見つけられなくて悩んでいる人の力になりたい、社会に貢献したい、と以前にも増して強く思い、モノリスを立ち上げたと言います。横山さんは声を弾ませながら、「企業と働きたい人とのマッチングをしたい」「高齢者や障害者が施設入所だけではなく、『自宅で暮らすこと』が、本人や家族の選択肢の1つとなるように、地域の在宅サービスを増やしていきたい」「いつか津久井に、通所と入所が共有し合えるような小さいグループホームをつくるのが夢。そして障害者も高齢者も24時間、365日訪問介護できる体制をつくりたい」、やりたいことが次々に口から出てきて止まりません。
障害があることを全く感じさせない明るさとフットワークの軽さで、周囲を明るく巻き込んでいく魅力のある横山さん。「モノリス」な社会は、そう遠くないと感じさせてくれました。
「NPO法人Monolith」は・・・
- 介護や福祉への熱い思いを持つ、常に前向き笑顔の絶えない、横山雅弥さんが理事長!
- 障害がある人もない人も、みんなが楽しく過ごせる場所!
- 障害者も高齢者も健常者も地域の人みんなの「居場所づくり」を目指してる!
そんな素敵なNPOでした。今度はランチタイムにおじゃまします!