ここ大倉山で生まれ育った森和夫さんは、何よりも、人との出会い、そしてそこから育まれる「人々の笑顔」を大切にしてきた。
静岡県磐田市と港北区を拠点に不動産の賃貸・管理を主な業務とする株式会社モリシアの代表取締役を務める森さん。会社事務所も兼ねた大倉山の自宅敷地には、多くの人を招き、笑顔を育む「おもてなし」をしようと、趣味が高じて個人庭園「森の蔵ガーデン」を造営した。
森の蔵ガーデンとは?
この森の蔵ガーデン、ただ整備した庭ではなく、なんと、ほぼ森さん一人の手づくりによるもの。敷地一面のタイル張りのスペースも、最奥に広がる傾斜地を利用した緑あふれる植栽、石垣、バーベキューコーナーに至るまで。
敷地内の最も高い場所にまつられている稲荷大明神の鳥居近くには「和(やわ)らぎの滝」があり、井戸水の沸く森の泉からの流れとともに、池に流れ落ちる。この滝も森さんの自作。森さんは「コンクリートで流れの形をつくり、知り合いに分けてもらった石をその両側に積むことで、自然と調和させたんだよ」と説明してくれた。
傾斜地の植栽も実に多彩。2月の早咲き桜に始まり、梅、3月・4月に桜、ツツジ、5月にはサツキと、四季折々の表情で訪れた人を迎え入れてくれる。春から秋にかけて、傾斜地の低層域では、色とりどりの花が風に揺られて楽しげに踊る様子も印象的。それらの手入れも森さんが一手に行っている。
四季折々の花々
そして何より、門をくぐり少し進むと目に入るタイル張りの地面に大きく書かれた「Welcome」の文字にこそ、周囲の人たちに対する森さんの気持ちが凝縮されているようだ。
「おもてなし」
町内会の役職や信用金庫の理事などを歴任し、現在も信金総代や地元寺院の責任役員、保育施設の評議員などを務める森さん。それら地域の活動で培った人脈は広く、森の蔵ガーデンで開催するお花見会やバーベキューに、出会った多くの人を招待してきた。
多いときは200人近くが集うこともあるほか、海外から客人を迎えることも。さぞかし準備が大変では、と水を向けると、「みんなが喜んでくれたらうれしい。でも自分が一番楽しんでいるかもね」とおどけてみせた。
また、自宅敷地内にある会社事務所の一角には、やはり「おもてなし」のための一室、「和(なごみ)」が設けられている。飲み手に日本酒を美味しく飲んでもらうための唎酒師の資格、そしてワインのソムリエ資格も持つ森さん。時には、「和」で自ら腕をふるう料理とともに、その季節におすすめのお酒を振る舞う。
「和」の壁一面には、森の蔵ガーデンで行われたイベント等でのシーンを収めた集合写真がズラリと張られている。一枚一枚には、森さんの思いを映し出しているかのように、たくさんの笑顔が並んでいる。
「みんなで共有した思い出は、一生の支えになるからね」
数々の写真に目をやった後、森さんは、真剣な眼差しでそう口にした。
大倉山といえば、ギリシャ風の建物や個性的な店が立ち並んでいることで知られる都会的な街。その大倉山の一角で、人と人との出会い、共有する時間を大切に、多くの笑顔のために活動する森さん。これからも、まず自らが笑顔で、わが街、わが人を大切に思い続けていく。