相模人形芝居
相模人形芝居は、江戸時代中期頃に始まったといわれています。
鉄砲を撃つような構えで人形を持つ「鉄砲差し」と呼ばれる独特の操法と、文楽と同様に一体の人形を主遣い、左遣い、足遣いの三人が協力して操る「三人遣い」に特徴があります。特に「三人遣い」は、世界でも日本のみの操作技法であり、大変珍しい技法となっています。
相模国(現在の神奈川県の大部分)には、江戸時代から明治時代にかけて15カ所に人形芝居が伝えられていたといわれており、現在でも、厚木市の林座と長谷座、小田原市の下中座、平塚市の前鳥座、南足柄市の足柄座の5座により継承されています。
上演曲目には『先代萩』『太功記』『酒屋』など十数曲があり、地方の人々に伝承されている人形浄瑠璃の中でも有数の伝承として高い評価を得ています。
相模人形芝居 林座
厚木市林地区に伝わる人形芝居です。
始まりは定かではありませんが、今からおよそ280年前といわれています。江戸時代後期には、大坂の有名な人形遣い吉田朝右衛門を師匠に迎えます。朝右衛門が林に移り住んでから生涯を過ごして、近在の人々に人形を教えました。当時、人形芝居は数少ない娯楽の一つで青年たちは競って稽古をし、明治時代には「林の人形」「吉田連」とも呼ばれていました。現在、林の福伝寺には吉田朝右衛門の墓が残り、今でも師の遺徳を偲んでいます。
現在、林座には五十一個のカシラが伝わっており、高い舞台からでも人形の顔がよく見えるように鉄砲差しという持ち方を古くから伝承し続けています。林座は、長谷座とともに1953年(昭和28年)県指定無形民俗文化財に指定され、1971年(昭和46年)に国選択、1980年(昭和55年)に国の重要無形民俗文化財の指定を受けました。
相模人形芝居 長谷座
長谷の人形は、江戸時代中期から始まったと伝えられており、長谷座の伝承では、淡路の人形廻しが来て始めたといわれています。
長谷の堰神社には、淡路から伝わったとされる翁面があり、記念碑も建立されています。また、幕末から明治初期に活躍した西川伊左衛門からも指導を受けました。伊左衛門は、「相模人形芝居中興の祖」と呼ばれ、相模国に住み着き、カシラ作りから演技指導まで幅広く貢献し、最後まで「江戸系の鉄砲差し」にこだわったと伝えられています。
先人たちの教えであり、相模人形芝居の特徴である三人遣い、江戸系の鉄砲差しという操法を現在も継承し、林座とともに1953年(昭和28年)県指定無形民俗文化財に指定され、1971年(昭和46年)に国選択、1980年(昭和55年)に国の重要無形民俗文化財の指定を受けました。
公演
1年の中で林座は、2月に「相模人形芝居大会」、 7月に「荻野神社祭礼」「林自治会 BONフェスタ」、10月に「林神社祭礼」、 秋頃に「睦合西公民館まつり」「厚木市郷土芸能まつり」などに出演し、芝居を披露しています。
一方長谷座も、2月に「相模人形芝居大会」、3月に「南毛利公民館まつり」、4月に「堰神社祭礼」、秋頃に「厚木市郷土芸能まつり」などに出演。両者とも通年で各地域や施設等での「郷土芸能普及公演・郷土芸能出前体験教室」「企業イベント」等の公演も行っています。
子どもたちも大喜び
林座も長谷座も、古くから郷土に伝わる民俗芸能を鑑賞し、間近で人形に触れることで伝統文化に対する理解を深めてもらおうと、厚木市内の各保育園や小学校、公民館などを訪れ普及公演を行っています。芝居を披露して公演後は、子どもたち対象の人形操作体験も実施。毎回子どもたちからは「動かせるのが楽しかった」「おもしろかった」などの声が聞こえ、喜ばれています。
林座・長谷座とも座員を募集中
林座の葉山修次座長は、「地域の人々によって受け継がれてきた相模人形芝居を後世に伝えていくため、楽しみながら活動しています。相模人形芝居、そして林座の応援をお願いします」と話しています。
相模人形芝居林座
【稽古】第2・4土曜日午後/林自治会館・睦合西公民館
【座長】 葉山修次 080-3581-5483
長谷座の井上真弓座長は、「3人で一体の人形を遣うために、基本練習から演目へと稽古しています。月2回の稽古は和気あいあい。稽古で緊張しながらも、終った時の達成感ははかり知れません。一緒に味わいましょう」と話しています。
相模人形芝居 長谷座
【稽古】第1土曜日/南毛利公民館 第3土曜日/南毛利学習支援センター
【座長】 井上真弓 090-2915-8558