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【鎌倉のとっておき】< 時を囲う覚園寺>

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【鎌倉のとっておき】< 時を囲う覚園寺>
覚園寺の駐車場から見た最初の大倉薬師堂再建跡と推定される場所

 私の「鎌倉のとっておき」は二階堂の「覚園寺」である。鎌倉をご存知の方には物珍しさはないかもしれない。立地は北鎌倉の大寺院と山稜をまたいで至近なのに、奥深い小さな谷戸に世俗と一線を画したような面持ちで佇んでいる。そもそもこの寺の前身は三代将軍実朝公暗殺の時に難を逃れた北条義時が、守り神の戌神将を祀った大倉薬師堂にあると言う。大倉の名称からして中心部にあったはずだが、今の寺域は九代執権北条貞時の治世に定まった。はじめに再建されたのは山門に向かった道の途中、左手にある駐車場の地だったとの説がある。

 堂宇は夏の夜参りで有名な黒地蔵縁日の地蔵堂や愛染堂から始まるが、規模は思ったより小さい。その奥に古色蒼然たる茅葺の大きな薬師堂があり、本尊薬師如来像、日光・月光菩薩像、周囲に十二神将立像など国の重文が立ち並んでいる。その迫力や鎌倉時代の荘厳さ、そして歴史の重みを目の前で感受でき、時を囲う風格のある寺としておすすめしたい。

 鎌倉も観光地化が一層進み、増える参詣者に対する安全対策や、撮影スポットの整備のためにどんどん手が入っているが、昔ながらの風情は間違いなく損なわれてきている。その中で「覚園寺」はまだ整備を控えて時の息吹を残し、四季に応じた堂宇の趣を直に感じられる。まさしく心洗われる寺であり、訪ねるたびに新たな思いが刻まれる。

平塚邦彦

『鎌倉のとっておき』へ

住所

神奈川県鎌倉市二階堂421 覚園寺

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公開日:2025-03-05

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