内閣総理大臣賞など栄えある数々の賞を受賞した経歴を持ち、半世紀以上にわたって描き溜めた作品を厳選してまとめた画集「ヨーロッパ紀行」(前後編)も好評だった川崎市中原区在住の画家・垣内宣子さん。2025年3月17日から25日まで、駐日チェコ共和国大使館内にあるチェコセンター東京(東京都渋谷区)で「垣内宣子展~チェコに魅せられて~」と題した個展を開催しました。
垣内さんはチェコ共和国を含むヨーロッパ各地を巡る旅を通して、これまでにヨーロッパの風景を主な題材として500枚を超える作品を描いてきました。「プラハの街の美しさには特に深い感銘を受けました」と語るように、チェコには1996年、2009年、2014年と3回ほどスケッチの旅で訪問し、50点にのぼる作品を描いています。プラハの街並み、チェスキー・クルムロフの歴史ある姿などをモチーフにしています。
- 個展が開かれたチェコ共和国大使館
- 個展開催時の様子
今回の個展では、チェコの風景を描いた油彩画の大作や、水彩画のスケッチなど選りすぐりの作品30点ほどを展示しました。
同大使館内のギャラリーで日本人の画家が個展を開くのはとても珍しいことです。開催前には「日本にいながらチェコの空気を堪能してもらいたい」と垣内さんは心の内をそっと打ち明けました。
個展の様子を紹介!
駐日チェコ共和国大使館では2003年から「チェコ国際音楽コンクール」を開いています。2022年、このコンクールの公式ホームページに垣内さんの作品が採用され、表彰式と演奏会で受賞者に授与された賞状のデザインにも作品が使用されました。垣内さんは、このコンクールの実行委員会の顧問にも任命され、その関係は深まります。2023年には駐日チェコ共和国大使館に招待され、マルチン・クルチャル駐日チェコ共和国特命全権大使に、作品を寄贈。これに対して大使は大変喜び、直々に「大使館内のギャラリーで個展を開いてもらえないか」と打診されました。
個展に際し、垣内さんは「これまでに描きためてきたヨーロッパの水彩スケッチや、私が会長を務める大調和会の公募展で発表してきた油彩画の中から、チェコを取材した作品の数々を『垣内宣子個展~チェコに魅せられて~』と題し、ここチェコセンターで発表させていただきます」とあいさつ。
- 会場の様子
- 大作も数多く出展
続けて「私は女子美術大学(芸術学部洋画科)卒業後の1966年に日欧文化交流の交換学生としてヨーロッパを訪れました。そこでヨーロッパの石の文化に強いカルチャーショックを受け、以来ヨーロッパの風景を主なモチーフとして描き続けてきました。結婚後も、商社マンの夫の仕事の関係で、家族でハワイに2年間駐在したほか、毎年夫婦で私の取材を兼ねてヨーロッパほか近隣の国々へ旅をし、現地でスケッチを描き続けてきました」と振り返りました。
チェコに対する思いは「プラハを訪れた際に『これほど美しい街があるか!』と深く感銘を受け、合計3回にわたり現地を取材しました。その結果、とりわけたくさんのスケッチと油彩画がチェコを題材として生まれました」と語ります。「私の思いも伝わってか、駐日チェコ大使館を舞台に実施されている『チェコ国際音楽コンクール』の公式ビジュアルと賞状のデザインに、私の作品が採用されることになり、2022年から現在に至るまで使用されています。同時に同コンクール実行委員会の顧問に任命されましたので、微力ではありますがその務めをはたさせていただいております」と述べました。
個展に関しては「ご来場のみなさまには、私の作品を見ることで実際にチェコを訪れているような気分になっていただけましたら幸いです」と思いを伝えました。
また「この栄誉ある機会を与えてくださったマルチン・クルチャル駐日チェコ共和国特命全権大使とチェコセンターのみなさまには深くお礼申し上げます。このご厚意を胸に、これからも芸術活動を通じてチェコ共和国と日本、両国の文化交流へ貢献に務めてまいります」と感謝を表明しました。
個展初日にはオープニングパーティーも
個展の初日には盛大なオープニングパーティーも開催されました。
マルチン・クルチャル駐日チェコ共和国特命全権大使をはじめ、外務大臣や環境大臣などを歴任し、垣内さんの作品をコレクションしているという川口順子さん、衆議院議員の田中和徳さんや山際大志郎さんも駆け付け、垣内さんの個展開催を祝いました。

マルチン・クルチャル駐日チェコ共和国特命全権大使から花束を受け取る垣内さん
会場を訪れた日本在住のチェコの人たちからは「まるで故郷そのもの」と、垣内さんの絵を見つめて思いに浸っている様子でした。1週間の会期中には約500人の来場者が訪れ、遠方から足を運んだ人たちもいました。
作品が生まれるアトリエ
ここで垣内さんのアトリエを少しだけ紹介します。製作途中の絵の前には、大きなパレットと大量の絵の具があります。パレットは大理石製で、パティシエがチョコレートを作る際に使用する台を活用しているそうです。
「大好きだから描き続ける」、その一心で
半世紀以上、描き続けている垣内さん。その原動力については「好きだから。それだけ」。中学生で画家を志し、美大では洋画科を専攻。卒業後に当時はまだ珍しかった交換留学生としてヨーロッパに渡り、絵を学びました。
その後、いくつもの作品を生み出し2018年には内閣総理大臣賞を受賞。川崎市立井田病院や地域の小学校、川崎市の新庁舎にも絵を寄贈されるなど、地域貢献も積極的に行われています。

井田病院へ2枚寄贈。写真は同院院長と
5月には母校でもある、大戸小学校で児童らを前に講演を行いました。児童からの質問にも丁寧に答え、時間はあっという間に過ぎていきました。

母校の大戸小学校で児童に語り掛ける垣内さん
初出版の画集が大好評!500作品が2冊に
垣内さんは自身初の画集「ヨーロッパ紀行」(前後編)を出版。訪れた国ごとに作品が載っていて、ヨーロッパを旅するような気持ちでページをめくることができます。前後編ともに200ページ超えの大作で、絵の知識がない人も豊かな色彩に眺めているだけでワクワクできる画集です。