この連載は月1回、「ふたまたがわ歯科口腔外科」の中谷逸希院長が気になるお口のあれこれについてわかりやすく解説してくれるコーナーです。
「歯を失っても、入れ歯を入れれば大丈夫」。そう考えている方も多いかもしれません。しかし近年、「自分の口でしっかり噛んで食べられること」と健康や寿命との関係が注目されています。
日本補綴歯科学会誌に掲載された「補綴歯科治療は生命予後の延伸に貢献できるか?」という論文では、高齢者を対象とした研究から、自分の歯が多く残っている人ほど生命予後が良好であることが紹介されています。さらに興味深いのは、自分の歯の数だけでなく、失った歯を入れ歯などで補い、噛む機能を回復した「機能歯数」の方が、生命予後とより強く関連していたという報告です。
なぜ「噛めること」が大切なのでしょうか。歯科治療によって口の機能を維持することは、多様な食品や栄養素を摂取するうえで重要です。高齢になるほど、十分な栄養をとり、筋力や身体機能を維持することは、フレイル(心身の衰え)の予防という点でも大切になります。
もちろん、「入れ歯を入れれば寿命が延びる」と単純に言えるわけではありません。大切なのは、歯の本数だけを見るのではなく、「自分の口でおいしく、しっかり食べられる状態」をできるだけ長く保つことです。
歯を守ること。そして失った歯を適切に補い、噛む機能を守ること。歯が痛くないうちから定期検診に行き、いつまでも食事を楽しみ、健康に暮らしましょう。












