初夏の風がそよぐ5月の土曜日。2,500平方メートルの敷地ではブルーベリーやビワが実をふくらませ、じゃがいもやトマトの畑の上では、ソーラーパネルが雲の切れ間からのぞく、太陽光を待ちわびていました。パネルで作られた電力で井戸水が汲み上げられるほか、余った分は売電されています。
「ここは自給自足公園。携帯電話の充電もできるし、倉庫に野菜も備蓄している。避難所には指定されていないけれど、防災倉庫もあるから災 害時はみんなここに集まるんじゃないかな」。こう語るのは、同地を管理する『駅と緑と絆の会』の鈴木國臣会長です。
同会では16年前から、50人ほどの会員が花壇の手入れや木の剪定、農作業などを実施。秋の収穫祭では、餅つきや芋煮会が行われ、近隣の子どもたちや保護者、歴代の市長や議員らも集い、交流を深めています。
「ここは緑や花があふれていて、とても癒されるから、毎日来ているの」「鳥たちも安心しきっていて、人が近づいても逃げないのよ」。藤棚の下の木陰では、花壇の手入れの合間にひと息つく婦人らが、口々にパークの魅力を語ります。
新駅実現のめど立たず、荒れ地に
1997年、JR相模線の新駅用地として市土地開発公社が取得するも、新駅開業のめどは立たず、荒れ放題に。治安上の懸念もあり、2005年、荒廃地の改善に向けて西久保自治会の会長だった鈴木さんらが立ち上がりました。「土地の一部をきれいに整備して、新駅ができるまで暫定的に住民に開放してほしい。そうしたら、みんなで楽しみながら手入れをしますからと言って、地元議員と一緒に、市に交渉したんです」
官民一体で再生プロジェクト
除草作業など、同地の管理に掛かる費用は年間およそ70万円。経費削減につながり、市にとっても好都合でした。関係部署らで特別チームが編成され、官民一体となり、再生プロジェクトが実行。ゴロゴロの石ばかりの土は入れ替えられ、農地や花壇へ生まれ変わりました。その後も仲間との絆を深めながら改良され、現在の「自給自足公園」へ進化を遂げました。
発足から16年、「会員の高齢化」が唯一の課題だといいます。「農作業体験や花壇の手入れ、仲間づくりをしたい方は、どなたでもご入会を」。庭園内は柵に覆われているため、車の往来などを気にせずに、緑でふかふかの地面を思い切り走り回れるので、保育園や幼稚園の子どもたちの散策にもオススメです。
年会費は1世帯1,200円。入会希望者は、鈴木國臣さん090・9145・4166へ。