八王子市大楽寺町にある「ヘアピクシー」はヨーロッパの雰囲気が漂う一軒家美容室。2021年で27年目に入ったオーナー伊藤敬子さんにそのスタイルなどについて話を聞き、店舗の魅力を探った。
元八王子中学校からおよそ100m。住宅街の一角に美しい白い壁のピクシーがある。
店内も珪藻土による白い壁、太い柱、ビンテージ家具など「フランスやロンドンの雰囲気から影響を受けた」という伊藤さんのテイストが全面に出ている。「ヨーロッパにある田舎町のバーのようにしたかった」。好きなものに溢れるこの空間は、もちろん訪れる人の気持ちも豊かにしてくれる。
青山や原宿のサロンに勤務したのち、1995年7月、独立し実家の近くにピクシーをオープンした。「綺麗、可愛い、かっこいいは当たり前。大切なのは再現力。自宅でどこまで保てるか。1、2ヶ月先も自分でスタイルを作れるように。そんな思いでお客様に向き合っています」
ただ、伊藤さんによるとその考えは美容師なら一般的なもの。その上で「技術、デザイン、自分の趣味、そして何より大切なお客様の好み。これらを調和し仕上げていきます」。近隣住民から親しまれているのはもちろん、過去の都心店舗時代の顧客も未だに八王子まで通うほどピクシーは多くの人に愛される存在だ。
利用者との会話を弾ませる伊藤さん。しかしそのようなトークも美容師では当たり前のこと。「かつて初めてのお客さんに話かけて不愉快な思いをさせてしまったことがあります。でも、美容師が話かけることには意味があるんです」。その人の顔の形や髪質、ファッションを見て「ワンショット分の良い髪型」はすぐ作ることができるそう。ただ、普段の生活においてはワンショットで済むものではない。働いていたり学校へ通っていたり家事に従事していたりと、それぞれの暮らしがあり、利用者はそれらに応じた上で最善の髪型を求めている。「だからどこから来ましたか?何をしているのですか?と訊ねるんです。お客様の色々な要素を集積してスタイルを考えなければなりません」
たかが髪型かもしれないが、されど髪型。スタイルが決まれば気持ちも切り替わる。伊藤さんによると高齢の人でも帰る時は「目の輝きが変わっている」「背筋が伸びている」こともよくあるそう。「やっぱりみんな綺麗になりたいし、可愛くなりたい。かっこよくもなりたい。それはいくつになっても同じ。そんな思いに応え続けていきたいです」