横須賀の上町商店街でひときわ真新しいスペースがあります。写真家・越中正人さんがオーナーを務める「ヨコスカアートセンター」。自身の作品のみならず、様々な分野のアーティストの展示のほか、時にはコラボしたりと、アートを身近に感じられる空間を目指して開いたそうです。
そんな「ヨコスカアートセンター」で10月1日から『オープンスタジオ:当事者意識の加入』展が開催されています。制作者は越中さん自身で、いずれも映像作品。「先入観なしで観て自由な感想を持ってほしい」ということですが、今回はご本人から少しだけ解説も伺いました。
まず飛び込んでくるのが入り口横に設置されたモニターに流れる映像。アジア系の若者たちが片言の日本語で1人ずつ何かを語っています。
彼らは外国人技能実習生として訓練を受けるベトナムの若者たちです。日本とベトナムの国同士で協定が結ばれており、日本で働く前に日本語や文化、ビジネスマナーなどの教育を受けている「送り出し機関」に越中さんが取材を依頼して撮影されたものだそうです。日本へ行く前に「日本で何がしたい」「ベトナムへ帰ってきてからどうする」などを質問。さらに、事前に決められていなかった質問を投げかけた時の彼らの素の表情や言葉にも目を向けてほしいそう。「外国人実習生に関する事件が取り沙汰されていますが、人間一人ひとりのリアルにも目を向けてほしい」と越中さん。
次に人の「眼」と「口」を切り取った2つの写真がペアとなっている作品が壁に並んでいます。
これは世界各国の大統領や首相らのもので、新型コロナウイルスに関して談話を行っている最中の映像からピックアップしたもののようです。「マイノリティな意見も大切にしましょうという国際的な流れがある中、コロナに関してのイデオロギーに当事者意識や理念に差があるにも関わらず、少数派の考え方を一方的に『悪』と決めつけられがちなことへの違和感」があったそう。コロナ禍で実際に海外へ行けず情報が限られている今だからこそ、自分自身のフィルターを大切にして物事を考える契機にしてほしいという願いが込められているそうです。
いずれも「自分自身で考える」「海外」がテーマ。次回の開館日は10月14日㈭、15日㈮、16日㈯の午前10時30分から午後7時30分(木曜日は5時30分)で、入場無料、予約不要。上町でゆっくりと考える時間を持ってみてはいかがでしょうか。