1936年に旧陸軍の青年将校らが政府首脳らを殺傷した「2・26事件」。東京以外での唯一の事件現場として激動の昭和史をいまに伝える資料館「光風荘」(湯河原町宮上)を維持しようと、地元の有志からなる「光風荘保存会」が奮闘している。
急襲された光風荘
老舗旅館「伊藤屋」の元別館・光風荘は2・26事件当日の早朝、別動隊の青年将校ら8人の急襲を受けた。標的は、静養のため家族らと滞在中だった前内大臣の牧野伸顕伯爵。駆け付けた地元消防団員の救出活動で、牧野伯爵は難を逃れたが、護衛の巡査が犠牲となった。
現在同館は事件の貴重な資料を展示。また建物のそばには、牧野伯爵の曾孫にあたる麻生太郎氏(自民党副総裁・元首相)の直筆を彫った石碑も建てられている。
風雨で損傷、維持に奮闘
保存会の設立は2002年。老朽化のため取り壊しの話も上がっていた光風荘を維持し、歴史を後世に伝えたいと、町民有志により発足した。
同会は所有者から建物を借り受け、03年から資料館として一般公開を開始。観光ボランティアらが土日、祝日などに見学者を案内し、コロナ禍の前は年間約3500人が来館、19年には累計来場者数が6万人を超えた。
同保存会の児玉静夫副会長によると、事件で放火された光風荘は37年にほぼ原状復帰する形で再建されたが、現在、80年以上が経過した同建物は老朽化が進行。さらに「ここ数年の台風で、特に屋根が激しく傷んでしまった」。会員の会費や、来館者の寄付金で維持を続けているが、屋根の補修などに多額の資金が必要となったという。
そこで同会は今年、初めてクラウドファンディングを実施。250万円を目標に8月30日から11月5日まで支援を募り、109人から寄付金が集まるも、目標額の約20%にとどまった。同会は現在「いただいた寄付金を活用し、できる範囲での修繕を進めたい」と工事の計画を進めている。
同館はコロナ禍で昨年から休館が続いていたが、今年11月、予約者のみ見学可として再開。児玉副会長は「早く以前のように多くの見学者を受け入れられる形で再開できれば」と話している。