小田原市板橋のアトリエ「寂(じゃく)静居(せいきょ)」にて創作活動を行った日本画家・近藤弘明氏(1924―2015)。その作品を紹介する特別展「近藤弘明 幻華」が2021年12月に小田原三の丸ホールで開催され、そのPart2が1月8日から2月6日(日)にかけて、松永記念館で開かれている。小田原市が主催し、おだわらミュージアムプロジェクト、グループ「想」、SETENVが協力した。
弘明氏は仏教的想念に裏打ちされた独特の世界観を有した作品から、「幻想の画家」として高い評価を得る日本画家。小田原市は2016年に初期の作品から代表作までを含む約160点の作品の寄贈を受けている。
特別展は小田原三の丸ホールの開館と松永記念館の庭園等の整備に合わせ企画。松永記念館では、さらにその世界感に深く触れてもらおうとギャラリートークも企画し、1月15日には、弘明氏の長男で東北芸術工科大学教授の近藤一弥さんが来館した。
幼少期から制作現場や展覧会にも同行していたという一弥さん。「幼い自分にも『この絵はどう思うか』と意見を求め、翌日には絵が変わっていることも」と制作時のエピソードも語られた。

「寂静居」で制作する弘明氏(近藤一弥さん提供)
弘明氏は温暖な気候や都心への利便性を気に入り、1976年に52歳で東京から小田原へ転居して板橋にアトリエを設け、2015年90歳で亡くなるまで、そのアトリエで創作活動を続けた。いつも深夜に制作し、そばには自身のお気に入りの作品が数多く飾られていたという。
「寄贈した作品は父が最後まで手放さなかった作品ばかり」とその画業をたどりながら語る一弥さん。また、代表作でもある『寂映』や『黄泉の華園』などのほか、御感の藤や長興山紹太寺の桜など小田原の景物に着想を得て描いた作品も多い。一弥さんは「市民に見てもらえればうれしい。研究などに役立てほしい」と思いを語った。小田原市は「今後も縁のある作家として紹介していきたい」と話している。
観覧料は500円(高校生以下無料)。(問)郷土文化館【電話】0465・23・1377