厚木市の船子八幡神社に伝わる徳川家康の朱印状のほか2件が、2月12日の市教育委員会の定例会の決議を経て、市指定文化財に正式に決定する。
今回、新しく市指定文化財となる見込みなのは、有形文化財が徳川家康朱印状(附(つけたり)慶応元年献納添書(そえがき))と絹本(けんぽん)著色(ちゃくしょく)徳川家康像(東照宮御画像)。天然記念物が皇大(こうたい)神社のムクロジ(無患子)の計3件。市教委からの諮問を受けた市文化財保護審議会は、1月24日の答申の場で、3件とも「指定に十分適したものである」と説明した。
市内唯一の原本
徳川家康朱印状(縦32cm×横53cm)は、1591年11月に、家康が船子八幡神社宛てに発給したもの。昭和40年代に厚木市史編さんの調査で本殿にて発見された。
内容は、八幡社に一石(いっこく)五斗(ごと)を寄進し、武運長久を祈願するもので、文末に「福徳」の印文、直径約5・6cmの朱印が押されている。家康は相模国の寺社に所領を寄進する旨の92通の朱印状を発給しており、そのうちの1通であるという。そして、厚木市内に残る唯一の徳川家康朱印状の原本となる。市文化財保護課の担当者は、「ここまで朱印がハッキリ見えていて保存状態も良い。とても貴重なもの」と話す。
溝呂木家に伝わる画
同じく指定文化財となる絹本著色徳川家康像(東照宮御画像/縦97・4cm×横47cm)は、溝呂木家に伝わる徳川家康の肖像画。家康が平塚市の中原御殿周辺で鷹狩をする際には、溝呂木家に立ち寄り休息し、茶が振舞われたと伝わっている。
図様は、御簾、三つ葉葵及び渦巻の入った亀甲花菱文様で装飾された幕の下に、束帯姿の家康が畳に座しており、神格化された徳川家康の姿を描いた東照大権現像の様式に則っている。落款がないため確証はないが、作者は奥絵師木挽町狩野家の2代目の狩野常信と推測される。
また、棚沢の皇大神社のムクロジは、高さ18・2mで樹齢は140年と推定される。市内では希少性が高く、大形木で樹齢も100年を超え、価値が高いという。
「ぜひ見に来て」
有形文化財に指定される見込みの2件は、あつぎ郷土博物館(下川入1366の4)で見ることができる。徳川家康朱印状は2月1日(火)から3月6日(日)まで、絹本著色徳川家康像は公開中で、2月13日(日)まで展示される。ムクロジは皇大神社(棚沢118の2)で常時見学できる。同課では「文化財は身近にあることをご理解いただき、大切にしてほしい。ぜひ見に来ていただければ」と話す。入場無料。開館は午前9時から午後5時(入館は4時30分)。1月31日(月)、2月28日(月)は休館。感染症の拡大等で臨時休館の場合あり。問合せは同館【電話】046・225・2515へ。