「こんな時こそ、上を向いて」
横浜市保土ヶ谷区、JR線の元町ガードから花見台交番前交差点に至る「神奈川坂」の中腹に位置する斜面の上に建つビルの壁面に壁画が登場し話題を集めている。作品は縦7メートル・幅15メートルほどで、吉兆のサインとされる雲「彩雲(さいうん)」と桜が描かれている。地域住民らは「心が明るくなる」「毎朝、作品を見るのが楽しみ」などと話している。
壁画が描かれているのは初音ヶ丘の不動産デベロッパー「横浜エコハウス(株)」(飯島雅人代表取締役)の社屋ビル。壁面の塗り替えに合わせ、「コロナ禍で心苦しい話題ばかり、地域の方々が少しでも明るい気分になれれば」と飯島社長が以前から構想していた西側の壁面への壁画制作を実行に移した。
初音ヶ丘の東側に位置するビルから西側を望むと飯島社長が卒業した藤塚小学校が真向いに建つ。その壁面には壁画が描かれている。「出身校と向い合せの位置にあるこのビルの壁面に壁画を描きたい」。この地に事務所を移転した7年前から壁画構想は頭の中にあったという。
吉兆のサイン「彩雲」と桜
外壁の塗り替え計画に合わせ、絵画に精通した隣人にこの構想を相談すると、新桜ケ丘にアトリエを構える独立美術協会会員の洋画家・田中茂氏を紹介された。
飯島社長の思いを聞いた田中氏は協力を快諾。「花」をモチーフにした3つの図案を提案し、その中から、虹色に染まった雲「彩雲」を背景に咲く桜を描いた彩り豊かな作品の採用が決まった。
太陽の位置で趣き変わる
昨年11月に足場を組み田中氏が100平方メートルの壁面キャンバスに下絵を描き製作がスタート。田中氏の指示を受けながら、3人の看板職人が樹脂系のペンキを調合し、2カ月弱の期間を掛け刷毛で作品を描き上げた。キャンバスは西側壁面であることから田中氏は「西日が当たると違った雰囲気になる。太陽の位置で趣が変わるのがこの作品の特徴」という。
飯島社長は「コロナで暗い話題ばかりで、下を向きがちな世相だからこそ、丘に上にある壁画を見上げてほしい」と、長年の夢であった壁画に込めた思いを話した。