現在の松田町松田庶子に所在していたとされる松田城址の歴史を紹介した特別展「松田城 古文書・出土遺物から迫る」が町生涯学習センターで開催されている。発掘された貴重な遺物を通じ、これまで町内でもあまり光が当てられてこなかったという歴史を掘り下げている。
同展は町教育委員会が企画。町教委によると、松田城は15世紀中ごろから16世紀後半に掛けて城郭として使用されていたとみられ、旗矢沢、天神沢という2つの沢を天然の要害として利用した典型的な連郭式山城だという。小田原北条氏の筆頭家老だった松田憲秀の弟・新次郎康隆の持城だったとの記録が残っている。
特別展では、東海自動車道(東名高速道路)の改築拡幅工事により、1985年から87年まで実施された松田城址の発掘調査で発見された出土遺物約70点をはじめ、現在の城址周辺の写真なども展示している。カワラケと呼ばれる薄茶色の素焼きの土器や、火打金、鉄製の毛抜き、砥石、硯の破片など、当時の武士たちの生活の様子が垣間見えるものも少なくない。
特に釣鐘状の瓦質土器は、花を挿す花器として使用されていたと考えられ、同展の準備を進めてきた町文化財保護委員の桐生海正さんは「戦国時代の山城は当時の軍事拠点。それなのにこうした風流な土器が見つかったのが面白い。戦国武士たちの間で花を挿して愛でる文化があったのでは、と想像してみると一層興味深い」と話す。
また兵糧の米、麦、粟が焼けて炭化した貴重な出土品も展示。これらは当時、この城で激しい攻防戦が行われたことを示しているという。
郷土史に光を
展示品は町立松田小学校の資料室に保管されていたもの。今年2月から新校舎建設に伴う旧校舎解体により、同資料室も取り壊すことになった。そこで町教委では「今までほとんど町民の目に触れることがなかった」出土遺物を、町の歴史や文化を知る上で欠くことができない資料群として、特別展を企画した。
松田町出身で現在、県立足柄高校の社会科教諭でもある桐生さんによると、町の学校ではこれまで、松田城の歴史についてあまり教えられてこなかったという。桐生さんは「町にあった唯一の城と考えられている。これを機にこの城の歴史に光が当たり、多くの人の関心が高まってほしい。城址を史跡公園などにし、遺跡調査がさらに進めばうれしい」と話した。
同センターの開館は午前9時。火〜土曜は午後9時まで(施設利用予約状況による)。日曜は5時まで。月曜休館。同展は12月下旬まで開催予定。(問)同センター【電話】0465・83・7021