「農福連携」を掲げ、農業の担い手不足と障がい者雇用を解決する株式会社KAISEI。運営する就労継続支援B型「かいせいファーム横須賀」では土を使わない水耕栽培による野菜・食用花の生産が行われています。「障がい者支援」と「水耕栽培」を組み合わせたユニークなモデルには全国の事業者が注目!
かいせいファームが掲げる「農福連携」とは?
農業の担い手不足が叫ばれて久しく、農林水産省の調査では農業経営体は10年前の約6割にまで減っており、担い手不足に業界は頭を抱えています。
一方で、民間企業に雇用されている障がい者の数は約61万人で過去最高を記録。法定雇用達成企業の割合は48.3% となり、障害を持つ人が働きやすい環境が各職場で求められているのです。
その中で注目されているのが「農福連携」という考え方。農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みを指し、障がいを持つ人の働き口を創出できるとともに、農業分野では働き手不足の問題を解消できると期待されています!
かいせいファームも「農福連携」を掲げる事業所の一つ。障がいを持つ人が一般企業への就職を見据えた就労訓練を受けています。
その中でもほかの事業所とは一風変わった特徴があるようで…?
事業所内に潜入!記者が目撃した意外な「農場」の風景とは?
京急田浦駅から徒歩7分、北消防署のはす向かいに居を構えるかいせいファーム横須賀。「やさい直売所」の旗が揺れていて、野菜の販売を行っていることは確認できますが、畑はどこに…?施設を目の前にしても謎は深まるばかり。早速潜入して詳しい話を伺います!
土のない畑? ついに明らかになるかいせいファーム横須賀の秘密!
事務所内では梱包された野菜にシールを張る作業が進行中。挨拶もそこそこに、早速「あの、畑ってどこにあるんですか?」と疑問をぶつけると、一瞬の間の後、施設代表の佐野さんが「まぁ、見てもらった方が早いですね」とニヤリ。案内されるままに事務所の奥、二重扉の向こう側へ…
眼前に広がるのは青空と土色の景色ではなく、整然と棚に並ぶ葉野菜の畑。かいせいファーム横須賀の特徴、それは土を使わない「水耕栽培」で生産した野菜の販売でした!
同業他社も注目!水耕栽培野菜の魅力とは
- 水耕栽培とは、土を使わず水と液体肥料で植物を育てる農法。植物の根の部分を肥料が入った水に浸し、必要な水・養分と酸素を根から吸収させます。栽培する部屋は屋外と遮断されていて、害虫や病気の不安がないので栽培過程で農薬を使いません。健康的で安全な野菜を提供できる点が強みだとのことです。
- また、農産物を扱う小売店や飲食店にとって食材の安定供給は欠かせない要素。気温・湿度を徹底管理することで作物の成長をスケジュール通りに行うことが可能なため、納品先からも好評なのだそう。天候に左右されずに栽培できる点もポイントですね!
取材時には障がい者グループホームの運営者も見学に来ており、この就業モデルが他社の間でも注目されていることがうかがえます。実際に運営元の株式会社KAISEIには各地からノウハウ提供・コンサルの依頼が舞い込んでくるそうです。
利用定着の秘密は作業場の過ごしやすさ?
障がいを持つ人が働くにあたっての重要点は「環境が一定であること」。天候によって心身のバランスが崩れてしまう人も多い中、こちらでは年中一定の環境下で作業が可能なため、利用者の定着率も高いとのこと。
作業内容は個々の習熟度や体調によってその日ごとに振り分けられます。わからないことがあっても、スタッフや周りの利用者が丁寧に教えてくれるから安心!「落ち着いた方が多く、作業場はいつも穏やかな雰囲気ですよ!」とスタッフの鈴木さん。業務の合間には利用者同士が世間話や冗談を言い合ったりと明るく爽やかな印象を受けました。
一人一人に合ったペースで働ける!
通う頻度は各自のペースで調節可能。お弁当の無料支給や一部地域で送迎も受けられる点も助かりますね。
働く環境は、生産する作物の出来にも反映されると胸を張る代表の佐野さん。「真心込めて育てられた水耕作物を一度お試しあれ!」
ベビーリーフ、クレソン、スイスチャードなどの葉野菜のほかビオラなどの食用花を出荷。同社は生産物の小売店・飲食店への販路拡大のほか事業モデルの提供を通したコンサルにも取り組んでおり「商品や事業に興味を持った方は気軽に連絡をしてください!」と佐野さんは呼び掛けています。詳細は下部参照。