石臼挽きのそば粉製造などを行う久津間製粉(株)(久津間裕行社長)=本社・小田原市久野=が自社工場で改良を進めてきた冷凍の生そばが、このほど完成した。近年、そば店を取り巻く環境は高齢化や後継者不足が進む。大きな理由の一つ、店舗のそば打ち業務を軽減しようというものだ。
生そばの冷凍品は茹でると切れやすくなるため、そば本来の風味と引き換えに小麦粉の含有量を増やすのが一般的という。同社では15年ほど前から、埼玉県の製麺業者と共同で冷凍生そばを開発。改良を重ねながら大手ホテルや温浴施設に商品を卸してきた。
そば粉の割合を高く保ちつつ、そば粉のブレンドや水分の微調整を進めてきた冷凍商品が一定の品質を保てると久津間社長が判断。製麺から冷凍までを行う自社工場の開設に踏み切った。
4月に市内の工場が完成し、これまで通りに作った冷凍生そばだったが、社長の評価は「味が抜け気味で、いまひとつの出来だった」。
「製粉のプロとして人前に出せるものを作ろう。納得するまで付き合ってほしい」とスタッフに伝えた久津間社長。スタッフと1ミリ、1%単位で配合など調整を重ねてきた。
仕上がりも上々
開発に参加した同社の本山三男さんは「天候や湿度といった条件を踏まえての製麺は経験が必要で難しかったが、完成したそばは茹で時間も短縮でき、切りたての形状も残る仕上がり」と話す。
市内そば店などへの提供が始まった冷凍生そば。久津間社長は「和食文化の衰退を防ぐ商品だが、風味や香りは専門店に負けない。冷凍による食品ロス削減にも役立つので、将来的にはネット販売等にもつなげていけたら」と期待を話す。