冬の海は、思っていたよりも静かでした。 平潟湾の海辺を歩くと、潮の香りとともに、どこか凛とした空気が漂います。
今回の“さんぽ”の目的地は、長年この地で海苔づくりを続けている「忠彦丸海苔本店」さん。
最近耳にする「海苔の不漁」という言葉。その背景を探るため、 お話を伺いました。

Q1. 今年の海苔の生育状況はいかがですか?
まずは「不漁」という状況に関して、率直に伺いました。

A.「去年よりは収穫量がございます。ただ、水温の上昇の影響で魚や鳥による食害が活発になってきています。」
穏やかに語られる言葉の奥に、自然の変化と向き合う難しさがにじみます。 「海苔本来の成長スピードも遅くなってきております」とのこと。 毎年同じように育つわけではない…。 自然相手の仕事の現実を感じました。
Q2. 不漁の背景には、どのような変化があるのでしょうか?

A. 「一年を通して雨の量が減少し、山や川から流れ出る栄養素が少なくなっていると感じています。」
目には見えない“栄養”が、海苔の味や色を左右する。普段何気なく食べている一枚の裏側に、山や川までつながる循環があることに驚かされます。この地域は川が多く、本来は栄養豊富で風味豊かな海苔が育つ場所。その恵まれた環境にも、少しずつ変化が起きているそうです。
Q3. 食害への対策はどのようにされていますか?
漁の写真を見せていただきながら伺いました。

A. 「魚の食害を防ぐためにネットを張り、鳥に対しては海苔網を沈めるなど、毎年試行錯誤を重ねています。」
”毎年試行錯誤”という言葉が印象的でした。 自然は同じ顔を見せてくれないからこそ、その都度向き合い方を変えていく。 淡々とした説明の中に、積み重ねてきた経験の重みを感じました。
Q4. 忠彦丸海苔本店さんが考える 「良い海苔」とは?

A. 「色(深い黒色)、照り、風味、食感、喉越し、柔らかさ。すべてが整っている海苔が良い海苔だと考えています。」
一枚に、そんなにも多くの要素が詰まっているとは。“ただ黒いだけではない”という言葉が、印象に残りました。
Q5. この地域で海苔づくりを続ける魅力は 何でしょうか?

A. 「川が多く流れ込むため栄養が豊富で、風味豊かに育つことが魅力です。他の地域と比べて色落ちがしにくいのも特徴です。」
都市に近い場所でありながら、自然の恵みを受けられる海。 シーサイドライン沿線に、こんな豊かな現場があることを改めて知りました。
Q6. 海を守るために大切にしていることは?

A. 「ゴミは絶対に捨てないことです。ゴミは海苔網に引っかかり、最終的には自分たちに返ってきます。」
とてもシンプルな言葉ですが、強いメッセージでした。海とともに働くからこそ、守る意識も自然と育まれていくのだと感じます。
Q7. おすすめの食べ方を教えてください。
最後に、少しほっとする質問を。

A. 「熱々のご飯にのせて、醤油を少しかけて巻いて食べるのが一番です。焼き海苔は食べる前に軽く焼き直すと風味が戻ります。」
取材後、その言葉どおりに食べてみたくなりました。シンプルだからこそ、素材の良さがわかるのだそうです。
Q8. これからの海苔づくりへの想いを お聞かせください。

A. 「環境の変化はありますが、1枚でも多く収穫し、皆さまの食卓にお届けしたいです。“美味しい”と言っていただけることが何よりのやりがいです。」
その言葉を聞きながら、海苔は“商品”である前に、“誰かの仕事の結晶”なのだと実感しました。
さんぽを終えて

海の変化、自然との向き合い、そして一枚に込められたこだわり。今回のさんぽは、いつもの食卓を少し違って見せてくれる時間になりました。 金沢八景の海で育った一枚の海苔。次に味わうときは、その背景にある海の景色も一緒に思い浮かべてみてはいかがでしょうか。

















