現存する道真作と伝わる像
学問の神様、菅原道真を祭る永谷天満宮。ご神体は道真が鏡を見て自らの姿を彫刻したと伝わる高さ1寸8分(約5cm)の木像だ。
川辺浩司宮司によると、この像は902年に道真によって彫られ、五男淳茂(あつしげ)に渡ったという。淳茂はその後、永谷豪の下の坊(現在の貞昌院の場所)に移り住んだ。その際、朝夕、現在の同天満宮の天神山である山に登り、この像を拝んだことが起源と伝わる。
ただ、神社自体の創建は1493年。像はそれまでの間、地域の人々の手を渡り貞昌院に置かれていた時期もあった。しかし、この時新たに社殿が造営され、神社としての歩みが始まった。
また、神輿についてもある逸話が残る。1781年、江戸幕府の老中を務めていた田沼意次は、同天満宮のご神体である木像を時の将軍、徳川家治に見せることを計画。神輿に木像を乗せ江戸城まで運ばせたという。この時に使われたとされる神輿は、現在も同天満宮に残る。
なお、ご神体の公開は12年に一回、丑年の時に行われる。これは道真が牛を可愛がったことに由来するという。同天満宮の前にも牛の像が置かれ、子どもの健やかな成長を祈願して鼻を撫でる人の姿は多く見られる。