ウインドサーフィン、登山、スキー、自転車、ピアノ、墨絵…と多趣味で知られる俳優の石丸謙二郎さん。中にはプロ並みの腕前を誇るものもあり、多才ぶりに驚かされる。そんな石丸さんを突き動かすのは好奇心。「興味が湧いたらまずやってみる」のスタンスが人生をより豊かに、楽しくしてくれるのだとか。〝石丸流〟の人生100年時代を生きるヒントを聞いた。
熱中できる楽しみをたくさんお持ちです。
「ベースとなるのは『海と山』。風が吹いたらウインドサーフィンを楽しんでいるが、毎回コンディションが整うとは限らない。のんびり風待ちをして過ごす人もいるが、性格的にぼーっとできないのでそんな時は自転車を漕いだり、山に出向いてクライミングをしたり。欲張ってあれもこれも楽しんでいる。よく動いて、よく食べて、よく寝る。遊びが心身の健康維持に欠かせない」
37歳まで趣味を封印していたそうですね。
「役者という仕事柄、怪我をすることができない。日焼けもご法度。自分の立ち位置を確立しなければならないという思いもあり、あえて遠ざけていた。余裕を持てるようになって、一人で楽しめるものはと考えてウインドサーフィンにチャレンジしたが、簡単にはいかない。その悔しさがのめり込むきっかけとなった。上達の早道は実戦だと教えられ、レースにも参加。10年でアマチュアのトップレベルになり、61歳の時に73・71㎞という当時の日本第2位のスピード記録を出すことができた」
スキーも60歳になってからです。
「スノーシューを履いて雪山を歩いていた時、スキーならもっと楽に動けることに気付いて。これも夢中になって練習して1日にリフト80本乗った日もあった。上達すると世界が広がって、もっと楽しくなる。今シーズンはスノーボードにも初挑戦する。5年周期くらいで自分を突き動かす何かとの出会いがある。いつも心を開いているからこそ、新たな価値観を受け入れられる」
ピアノもその一つですか?
「ウインド仲間にジャズピアニストがいて、教えてもらった。1曲だけに絞って練習を重ね、駅にあるストリートピアノをこっそり弾いたことも。指先を通して身体と音が一体化する感覚が新鮮で、ピアノの魅力を理解できた。自分とは無縁の世界だと思っていたが、やってみることが大切。年齢は関係ない。『ネバー・トゥー・レイト』の言葉通りだ」
登山家なら誰もが憧れるマッターホルン登とう攀はんに成功しました。
「成功率は五分五分と言われていて、体力的にも厳しいものがあったが、挑戦してよかった。実は登山から派生した趣味に墨絵がある。訪れた先で感じたことを揮毫する野筆セットをアウトドアメーカーから渡されたが使い方を勘違いし、スケッチブックを山に持ち込んで絵を描いていた。恥ずかしい思いをしたが、それが今では個展を開くまでに。うん、これはこれで楽しい」
石丸謙二郎(71)/俳優でナレーター。登山をテーマにしたラジオ番組『山カフェ』が人気