社会課題を抱える現場を訪れ、「歩く」という行為を通じて日常に潜む変化の兆しを見つけ出すウォーキングイベントを市民グループの「Hanto on Labon Lab」が実施している。初回の7月26日は空き家となっていた市営住宅群を改装し、職住一体型の店舗兼用住宅として再生が進められている田浦月見台エリアを見学した。
発案者は一級建築士で福祉住環境コーディネーターの清水英行さん。「観察型まち歩き」というユニークなコンセプトを打ち立て、生活課題を見つけ出して改善策を講じていく。道中にあるカフェや個性的なスポットにも立ち寄るなど楽しむ要素も盛り込んでいる。
坂道と階段を登った先に住宅群が広がる田浦月見台は「空が近く、軍港を見下ろす風景は絶景。一方でその背後には住民の高齢化や空き家の増加、福祉サービスの届きにくさといった現実がある」と清水さん。平地が少ない谷戸と呼ばれる地域の共通課題であり、若者を呼び込む「坂の上のくらし」という新しい仕掛けに可能性を感じているという。都市機能や生活拠点を集約させるコンパクトシティの推進という考え方もあるが、「エリア一帯で若者と高齢者が入れ替わる『まちの新陳代謝』でコミュニティを維持していくことはできないか」と理想を話し、今秋の全面開業に向けて動き出しているまちの胎動を感じることを今回の狙いとした。この日は10人の参加があり、擁壁やブロック塀で支えられた斜面住宅地の暮らしや工夫、安全対策を清水さんが解説、月見台の出店者との交流も楽しんだ。
同Labでは、まち歩きで得た知見を行政や大学との協働による政策提案や研究に役立てていく考え。今後は8月2日(土)「衣笠・不入斗」、16日(土)「上町・坂本」、30日(土)「浦賀・鴨居」、9月6日(土)「公郷・根岸」、13日(土)「久里浜・久村」の各エリアを歩く。参加無料。申し込み・問い合わせは、【メール】neptune.hide@gmail.com