山田土筆 細山美術館
細山の出身で、地元の風景画を多数描いた日本画家の故・山田土筆(本名 昌一)さん。生前、自宅を改装して開いていた「山田土筆 細山美術館」が、生誕100年を記念し、長男・耕太郎さん(68)の手により10月から期間限定で開館する。
山田土筆さん
土筆さんは1925年、細山生まれ。東京物理学校(現東京理科大学)を卒業後、日本画家の田中以知庵氏に師事した。教員として勤めながら絵の道へ進み、麻生区文化協会や細山郷土資料館(現在は閉館)の委員も務めるなど、地元の文化や歴史保全活動に尽力。1995年、自宅の改修を機に同美術館をオープンした。2023年、98歳で亡くなった後は閉館していたが、生誕100年にあたる2025年、耕太郎さんが記念展を企画。10月から11月末までの2カ月間限定で、開館することになった。
かつての景色を絵に
大小あわせて1000点ほどの作品が保管されているが、土筆さんが昔の風景を思いながら描いたものも多い。農作業に通った山道や、通学、通勤途中に眺めた百合ヶ丘駅ができた頃の風景、造成前の金程地区を見下ろす夕景など、今では見ることができない景色だ。「子どもの頃こうだった、という記憶で描いているもの。発展の一方で失われていくことを思い、残さなければと考えていたようだ」と耕太郎さん。土筆さんは生前、来館者を自ら案内し、かつての郷土の様子などを説明することをライフワークとしていたという。近隣の小学校の児童が地域学習で同館を訪れるのを楽しみにしており、倉庫には訪問後に児童から送られてきた学習の成果物が数多く残されている。「教育者でもあったから、未来を担う子どもたちに昔のことを伝えなければ、という思いもあったのでは」と耕太郎さんは話す。「歴史は必ず変わっていくものだが、昔の姿を心に刻み、何かを感じてもらえたら。古き良き時代を伝えたいという父の思いを引き継いでいきたい」
11月末までの土日休日に開館
美術館は、10月4日(土)から11月30日(日)までの土日休日、午前10時から午後4時まで開館。期間中は50点ほどの作品のほか、下絵となるスケッチブックも自由に見ることができる。入場無料。
住所は麻生区千代ヶ丘6の3の7(千代ヶ丘ゴルフ練習場向かい)。駐車場がないため、公共交通機関の利用を(車いすの場合は事前連絡)。
問い合わせは【電話】044・966・4083(開館日のみ)。