横浜市金沢区のシーサイドライン「南部市場駅」からもほど近い、国道357線沿いに大規模物流施設「Landport(ランドポート)横浜杉田」が2025年4月に完成。「オープン・シェア型物流施設」をコンセプトに、地上4階建て、敷地面積約71,000㎡と大規模な物流施設が誕生しました。
広大な工場跡地に何ができるのかー。ここ何年かは「ショッピングセンターができるのでは」「大型家具店ができるのでは」そんな噂話も聞く中、いつからか「物流施設ができる」という話に。この地域では久しぶりの大型施設の誕生を心待ちにしていました。が、物流施設だと中に入る機会もないだろうし、どんなところなんだろう?と気になっていたところ、シーサイドライン新杉田駅務区長の飯島宏治さんと取材できるチャンスが!
早速行ってきました。
とにかく広い敷地にはコミュニティスペースや多目的広場も

全46席のコミュニティースペース。飲食の持ち込みOKで、自動販売機も
物流施設というと、四角くて、ちょっと殺風景で、大型トラックが出入りしているイメージ。
ですが、この施設には、誰でも自由に出入りできる「コミュニティスペース」や、地域との共生を目的とした多目的広場「LandHOOP(ランドフープ)」を開放。おしゃれなカフェっぽいコミュニティスペースは全46席あり、なんとエアコン完備!予約不要で無料で使える素敵な空間です。
ママさんたちや地域住民の井戸端会議の場や学校帰りの子どもたちの遊び場など、すでに思い思いの使い方をされているそう。
・コミュニティスペース
・多目的広場「LandHOOP」
開放時間/8:00~19:00

人々がつながり、関係の輪を広げていけるようにと思いが込められた「LandHOOP」
横浜市の「津波避難施設」としても登録。屋上に約1000人が逃げられる

災害時は屋上駐車場に約1000人が避難できる
さらに、ランドポート横浜杉田の所在地の横浜市金沢区と防災協定を締結し、「津波避難施設」に登録。非常時は車両が屋上の駐車場に向かうための車路「ランプウェイ」を歩いて屋上駐車場に避難できるようになっており、いざというときの心強い存在になりそうです。
- 写真左側が車路(ランプウェイ)
- ランプウェイを歩いて行くと屋上に避難できる
物流施設として国内初のスマートコミュニティ農園が屋上に登場!

約160㎡のスマートコミュニティ農園 ”Vegestic Farm” Yokohama Sugita by grow
さらに面白いなと思ったのが、広大な屋上の一角に屋上農園があること。それもただの農園ではないのです。スマートコミュニティ農園といって、スマホアプリを使い、参加者皆で農園を共同管理しながらコミュニケーションを向上させようというもの。今は施設利用者に限られていますが、ゆくゆくは地域の人たちも迎え入れ、持続可能な農と食という活動を通じた交流の場を目指しているそうです。

農園の説明をする須崎さん(左)、飯島駅務区長(中央)、佐久間さん(右)
取材に訪れた日は、ちょうど9月にオープンした直後。オープニングイベントで植えられたアカタマネギや芽キャベツ、スナップエンドウなどが成長中。屋上ということもあってか、すくすくと育っているそうです。

スマホアプリを使用し、参加者に水やりなどの通知がいく画期的なシステムを説明する須崎さん(右)
また、屋上農園には、ローズマリーやレモングラスなどのハーブが植えられ、癒やしの空間に。
ここで育ったハーブを使ったハーブティーや料理教室なども今後企画していくそう。普段話す機会があまりない同じ施設で働く仲間と、野菜を育て、食べる。楽しそうな取り組みだなと思いました。

シーサイドラインのイメージキャラクター「キラキラ☆シーたん」と記念撮影。「屋上からは工場と海も見えるたん☆」
【インタビュー】地域と共生し、「愛される施設」へ
このランドポート横浜杉田は、株式会社IHIと野村不動産株式会社が共同で開発。担当者の須崎佑大さん(IHI)と佐久間淳一さん(野村不動産)にランドポート横浜杉田に対する思いを聞きました。
- IHIの須崎さん
- 野村不動産の佐久間さん
―「地域連携」をコンセプトに掲げ、地域に開かれた物流施設は今まであまりなかったかと思います。これまで取材してきて、多目的広場やコミュニティスペースのように、一般の人が自由に入れるという視点が新鮮だなと思ったのですが、なぜ開かれた施設にしようと思ったのですか。
須崎さん 「この土地は、弊社が1937年(昭和12年)から所有し、2019年に工場が閉鎖されるまで80年以上、所有している歴史があります。愛着のあるこの土地で、地域の歴史や文化の継承・伝承も含め、地域社会と共生・貢献を目指したいと考えていました」
佐久間さん「一般の方たちからすると、物流施設は中に何があるか分からないですし、トラックがいっぱい増える。社会インフラとして必要不可欠なものなのに、まるで、『嫌悪施設』のようなイメージが付いてしまう場合があるんですよね。大規模な施設を作ろうとする段階で、地域への影響はすごく大きいと考えられますので、いかにこの嫌われものにされてしまう物流施設を、『みんなに愛されるような施設にするか』をまず考えました」
と思いを語ります。
- 3、4階吹き抜け部分の「立体自動倉庫」
- 4020個のパレットを保管し共同利用できるのが特徴
ー物流業界でも人手不足という問題を抱えていると聞きます。Amazonや楽天市場など誰もが利用したことがあるECモールを支えているのもこうした物流施設・倉庫があるからこそだと思いますが、雇用問題などについてはどのようにお考えですか。
佐久間さん「地域の雇用をいかに促していくかというのは非常に重要です。業界的にセキュリティ面やプライバシーの観点から、慣習的に物流施設はあまり開かれてきませんでした。しかし、人手不足は深刻な状況です。機械化や自動化やロボットを導入しても人は必要です。ドライバー不足・倉庫で働くワーカー不足は他の物流施設でも懸念されている点です。だからこそ地域に開き、地域と連携することで、将来的にはこの施設に関わり、働いてみたいと思っていただくところに繋がるといいなと思っています」

食事や休憩できる従業員用のカフェテリア。杉田梅をモチーフにしたランプやクッションが配置されている
須崎さん「4月のオープニングイベントで行われた施設見学には400人を超える人に来場していただきました。見学された多くの方から『こんなに綺麗だと思わなかった』『ここで働きたい』という声も寄せられ、手ごたえを感じました」
―今後の展望はいかがですか。
須崎さん「本格的に動き出した屋上農園の取り組みを軌道にのせることです。現在は施設で働かれる方に限られていますが、将来的に地域の人たちにも開放された交流の場を目指しています。私は農園内のコーディネーターとしても活動しますが、イベント実施などを通して、地域開放に向けた条件整理やコミュニティ形成、文化づくりを進めていきたいと考えています」
佐久間さん「地域の方たちとは別に、物流に限らず様々な関係性が広がっていけたらという期待を込めてこの施設を作っています。オープンしてから想定以上に多くの地域の方々とのつながりが生まれ、非常に驚いております。何か新しい付加価値をこの地域でつくっていけたら!ぜひ地域の皆様と一緒に取り組んでいけたら!と思っています」
最後に
一緒に取材をし、施設を見学した飯島駅務区長はなんと学生の頃、物流施設でのアルバイトの経験があるそう。「当時は何をするにも人力でした。殺風景だった倉庫で働いていたので、きれいな施設にびっくりしました」と話していました。
今後も年に1回の防災イベントや避難訓練なども企画中。杉田梅が開花する来年1~2月頃にはお花見も楽しめそうです。