近年、藤沢がアニメの舞台に採用されるケースが増えている。10月末に発表された「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」では京都市を抑え、全国最多の5作品で”聖地”に認定。とりわけロケーションに恵まれ、龍神伝説などの逸話が残る江の島が、舞台装置として制作者からの人気を集めているようだ。
舞台装置としての江の島
神社でハート形の絵馬を購入した高校生の男女。海の見える展望台に着くと、女の子が主人公に思いを伝える――。
昨年10月からテレビ放送され、人気を博した「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」のワンシーンだ。3月、市内で行われたトークショーで原作者の鴨志田一さん(41)は「江の島は湘南を象徴するような海のある景色と日常が同居する場所。ストーリーを盛り上げてくれたと思う」と舞台装置としての江の島の魅力を話した。
求められる風景がある
藤沢の中でも江の島を題材にした作品は少なくない。聖地に選ばれた5作品のいずれも江の島が舞台として登場。湘南藤沢フィルム・コミッション(市観光協会)はアクセスの良さに加えた海辺の街というロケーションが人気を集めているといい、「アニメやドラマの製作会社も絵になる風景を求めている。下見に訪れた際『江の島はどこを切り取っても絵になる』と喜ぶ人もいる」と説明する。
説得力のある場所
2014年にアニメ化された「メカクシティアクターズ」の原作者、じんさん(29)。来年に上映を控える新作「カゲロウデイズ『NO.9』」に登場する新キャラクターや物語は江の島を訪れたことがきっかけで生まれたという。
江島神社や島には龍神伝説にちなんだ龍の逸話がいくつも残る。「話の中で龍が原因で親しい人が行方不明になる設定があるのですが、非現実的でも龍神伝説がある江の島なら視聴者に『ありえるかも』と思わせることができる。江の島に来なければ、今回の物語は生まれなかった」と振り返る。
関連イベントも
2019年9月から11月までは新ストーリーを元にし、「メカクシティクエストin江の島」と題した謎解きイベントを実施。現実世界の江の島でファンらが作品の世界観に浸りながら、イベントを楽しんだ。
じんさんは「登場人物が『そこにいた』と感じられる場所は共感も得やすい。その意味でも江の島はすばらしいロケーションだと思う」と話した。